サン・テミリオン村の丘の斜面に位置するシャトー・オーゾンヌは、サン・テミリオンの中でたった4つのシャトーのみに与えられることが許された、最上位のプルミエ・グラン・クリュ・クラッセA(第一特別級A)を保持している別格なシャトーです。

5大シャトーにペトリュス、シュヴァル・ブラン、オーゾンヌを加えたボルドー8大シャトーに数えられ、年間生産量僅か2万本程度とポムロルの名高いペトリュスよりも希少でありながら価格はずっと安く、 世界中の愛好家から大変な人気を得ています。

ところが、オーゾンヌは、2022年に予定されている次回のサン・テミリオンの格付けに申請せず、格付けから撤退することを発表しています。

そもそも、サン・テミリオンに格付けがあったのかと思う方も多いかと思います。

サン・テミリオンはユネスコの世界遺産にも登録された歴史的な町サン・テミリオンを拠点に広がるワイン産地で、その格付けは1954年に法定されました。1855年に制定されたボルドー左岸のメドック(およびグラーブ)の格付けに比べるとまだ歴史が浅いですね。サン・テミリオンの格付けの最も大きな特徴は10年ごとに見直しが行われることです。メドックの格付けが150年以上経った今でも一部の例外を除いてほとんど変わっていないのに対し、サン・テミリオンの格付けはこれまでに1969年、1986年、1996年、2006年、2012年の6回にわたって改訂されました。

格付けは第一特別級のプルミエ・グラン・クリュ・クラッセと特別級のグラン・クリュ・クラッセからなりますが、プルミエ・グラン・クリュ・クラッセは上級のAと下級のBに分かれるため、実際には3階級となります。

最高位のプルミエ・グラン・クリュ・クラッセAはシャトー・オーゾンヌとシャトー・シュヴァル・ブラン、シャトー・アンジェリュスとシャトー・パヴィの4シャトー、プルミエ・グラン・クリュ・クラッセBが14シャトー、グラン・クリュ・クラッセが64シャトーとなっています。

(2022年1月時点。シュヴァル・ブラン、オーゾンヌ、アンジェリュスは撤退を表明)

シャトー・オーゾンヌについての最古の資料は、14世紀のものがあり、当時この地を治めていたレスコート家が、この近辺でブドウ造りを行っていたという記録が残されています。 

ちなみにこのオーゾンヌという名前は、西暦4世紀頃、この地域に滞在したローマの有名な詩人アウソニウスがブドウを植え始めたことに由来し、アウソニウスのフランス語読みがオーゾンヌであった事から、このワインはシャトー・オーゾンヌと呼ばれる事になったそうです。

他の格付けシャトーと同様、シャトー・オーゾンヌもその長い歴史の中で、オーナーが変わり、土地を他のブドウ畑所有者から買い増していきました。1810年、他の所有者との共同所有を清算し、その頃から市場での評価は高まりプルミエ・グラン・クリュ・クラッセの格付けを得ることになりますが、一時期深刻な不調に陥ってしまいます。 

1974年、この状況を改善すべくオーナー一族であるアラン・ヴォーティエ氏が、自らシャトー改革に乗り出し、醸造家パスカル・デルベック氏を招き、二人三脚でワインの品質向上に取り組みました。彼らの懸命な努力により、シャトー・オーゾンヌの評価は再び上がり始めました。

アラン・ヴォーティエ氏は2002年からワインコンサルタントとしてミッシェル・ローラン氏を招き、最新のワインの醸造技術を学び、市場での評価を更に上げるのに成功します。その後、アラン・ヴォーティエ氏の長女であるポーリン・ヴォーティエ氏にシャトーの経営を引き継ぎ、現在も彼女の監督の元、世界最高峰のワインが造り続けられています。

シャトー・オーゾンヌのブドウ畑はわずか7ha。数ある格付けシャトーの中でも、抜きん出て小さい部類に属します。日当たりがよく、風を凌ぐ南東斜面に位置し、石灰岩が含まれる粘土質土壌には、約55%のカベルネ・フランと約40%のメルローに加え、少量のカベルネ・ソーヴィニョンとプティ・ヴェルドも植えられています。ブドウの樹の平均樹齢は約50年と、一般的なシャトーよりも非常に長いのも特徴です。

厳しい収穫制限により1ha当たり約35hlという低収量を維持し、成熟のピークに達したブドウのみをすべて手摘みで収穫しています。その後、フレンチオーク製のタンクでアルコール発酵を行い、小樽にワインを移してマロラクティック発酵を行います。

メルローとカベルネ・フラン半々で作られるワインは、ベリーの甘さの中にスパイシーさをあわせもつ印象的なアロマ、力強い完熟感、奥深いコクを持ち、優雅なフィニッシュが印象的なワインに仕上がっています。

良い年のワインであれば、50年、100年は熟成できるとも言われる長命なワインです。

シャトー・オーゾンヌのワインはその評価の割に市場で見かけることが少ないワインの一つです。シャトー蔵出しワインはトレーサビリティと保管状態も万全。多少値が張ったとしても購入しておくのがおすすめです。

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フランス南西部に広がる温暖な気候のボルドーは、フランス最大のワイン産地であり、世界の冠たる赤ワインの銘醸地。
とくに5大シャトーを有するメドック地域が有名で、しっかりとしたフルボディと、いかり肩のボトルが特徴です。

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