南フランス地中海沿岸に広がるラングドック・ルーション地方。
スペイン国境沿いまで広がるこのエリアは、「ヴァン ・ド・ペイ」という、比較的カジュアルなイメージを持つ地酒的なワインで世界的に有名になった。その魅力は何よりその抜群のコスト・パフォーマンス。ただプライスが安いというわけではなく、価格に対してのその品質が非常に優れている点だ。さらに、マーケット的な視点から見て、フランスワインでは他にあまり例がない「ラベルの読みやすさ」に対してもしっかりと配慮されている点が挙げられる。ChardonnayやCabernet Sauvignonのように、「ブドウ品種がラベルに明記されている」ということで、消費者側からすると、その味わいが容易に想像しやすく、それがシンプルに表記されていることも、ヒットの要因になったのは間違いないであろう。
日本において、フランスワインといえば、とかく高級ワインに注目が行きがちだが、世界的なワインマーケット全体から考えた場合、このヴァン・ド・ペイのような存在は、非常に重要な位置を占めているし、決して軽視できない存在である。
もちろんラングドック地方には、それ以外にも注目すべきワインは多数存在する。フィトゥやミネルヴォワ、コルビエール等、A.O.C.ワインとして、そのクオリティの高さが認められ、成功しているワインも有名だ。
この地方の郷土料理の一つで、私が個人的に大好きな「カスレ (白インゲン豆と肉の土鍋煮込み) 」と呼ばれる料理があるが、まさにコルビエールやミネルヴォワの赤ワインと合わせるとピッタリと寄り添い、素晴らしい相性を楽しむことができる。
ワイン単体として考えれば、ブルゴーニュ、ボルドーのワインは偉大だが、このように土地の料理と一緒に楽しむ場合は、やはりその土地のワインと合わせることで、むしろワインもポテンシャル以上に力を発揮し、料理もワインも最大限に楽しむことができる可能性もある。
そして、ラングドックからさらに南下したスペイン国境沿いに位置するルーション地方は、「フォーティファイド・ワイン(酒精強化ワイン)」の生産地として世界的に有名だ。
フォーティファイド・ワインとは、ワインの発酵中、もしくはその前後に蒸留酒を添加することでアルコールを強化したワイン。元々はアルコールを添加することで保存性を高めたと言われるが、それによって、ワインは独特のフレーヴァーと味わいを持つことになり、ひとつの伝統的なワインのスタイルとして現代までに定着したものである。
ルーション地方で、特に有名なフォーティファイド・ワインとして、「バニュルス」があるが、このバニュルスとチョコレート、例えば、ガトー・ショコラとの組み合わせは、とても素晴らしい相性を奏でる。
果実の凝縮したニュアンス、樽熟成に由来する香ばしいフレーヴァー、ブランデー添加による複雑性のあるしっかりとした味わいと風味が、チョコレートの持つ香りと味わいに見事にマッチするのだろう。
一度これを試してみると「チョコレートに最も相性の良いワインは?」の答えが、もしかしたら見えてくるかもしれない。
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