トレンティーノ・アルト・アディジェ州は、イタリア最北部の州でアルプス地帯にあり、北はオーストリア、西はスイスと国境を接し、東南にドロミテ山脈が走り、イタリアでも最も美しい山岳地帯の一つです。
大きく2つの地域に分けられ、北部のアルト・アディジェ地方は、第一次大戦以前オーストリア領であったことから公用語は今でもドイツ語が使われ、ワインのラベルにもイタリア語とドイツ語が併記されています。
一方、南部のトレンティーノはトレントを中心に古くから知られる地域で、ヴェネトからの道とオーストリアに通ずる道の三角地点として交通の要所でもありました。
州の大部分が標高千メートル以上にあり、夏季は雨が多く、気温の差も大きくなります。また豊かな森林に覆われており、林業が盛んです。州の中心を北から南に流れるアディジェ川の周辺には、リンゴやブドウの樹が植えられており、南向きの斜面に植えられているブドウからは少量ながら高品質のワインも造られています。
南部のトレンティーノ地方は、アディジェ川の渓谷に沿ってブドウ畑やワイナリーが点在しております。モーツァルトが滞在した町として知られるロヴェレートの南にあるヴァル・ラガリーナや、ガルダ湖まで続くヴァル・ディ・ラーギ沿いにもブドウ生産地が点在しています。州全土に植えられている品種に、ミュッラー・トゥルガウやピノ・ネロがありますが、地区における特有の品種も存在しています。
アルト・アディジェ地方のワインは白ワインを中心にアロマに富み、エレガントであり、トレンティーノ地方のワインはしっかりとして骨格があるといわれています。どちらの地域にも少量生産ながら高品質のワインを生産する小規模ワイナリーが増えてきています。
この地方の赤では、ラグレイン、スキアーヴァなどの土着品種からメルロー、カベルネ、ピノ・ネロなどがある。白では、シャルドネ、ソーヴィニヨン、トラミネールなどがあります。また、フェッラーリ社に代表される瓶内二次発酵のスプマンテも造られています。
ヴェネト州は、イタリア北東部の州で、北はアルプスを境にオーストリアと接しポー河左岸の平野部から南のアドリア海までの広い地域で、州都は水の都、ヴェネツィアです。
北部のドロミティ山塊からロンバルディア州と接する西部のガルダ湖、ポー河からアドリア海へと丘陵地帯と川を有し、ブドウの生産量は多くイタリア一を誇ります。州の広い地域にブドウ畑が広がっており、その多くは中部から南部にかけての長い地域とフリウリ州との境に集中しています。
ヴェネト州のワインとして古くから知られるソアーヴェはイタリアを代表する白ワインとなっており、日本でもイタリアワインといえば白はソアーヴェ、赤はキャンティという時代が長く続きました。
ソアーヴェは、ミラノからヴェネツィアに向かう途中のヴェローナから30分ほどの丘陵地帯で、ソアーヴェの城を中心とする広い地域で造られます。一方、この州を代表する赤ワインといえばヴァルポリチェッラがあります。リーズナブルな価格の食事に良く合う赤ワインです。また同じブドウを翌年まで陰干しして造るアマローネは、バローロやブルネッロに肩を並べる熟成赤ワインになっています。このワインは、ルビー色で熟成にしたがいガーネット色を帯びてきます。ブドウとアーモンドの香りを含み、苦味とコクのバランスが良く、食事を通して楽しむことのできるワインになります。バローロ同様、リゾットなどにも使われますが、この地方では馬肉のブラザート(煮込み料理)や熟成辛口チーズに合わせます。
また、グレーラ種主体で造られるコネリアーノ・ヴァルドッビアデネ・プロセッコは、世界で注目される発泡性ワインになっています。リンゴやナシの果実のアロマを含み、フルーティで心地好い飲み口であることから近年人気を得ています。
ヴェネト州のDOCワインは、この州の周辺から流入したブドウを多く有するものが少なくありません。南東部においては、ピアーヴェ、コッリ・エウガネイ、コッリ・ベリチなどがあります。植えられている品種は、白はガルガネガ、シャルドネ、モスカート、ピノ・ビアンコ、フリウラーノ、ソーヴィニヨン・ブラン、赤はメルロー、カベルネ、バルベーラ、ピノ・ネロなどがあります。ヴェネト州は、ワインのバラエティや生産量のみならず、その品質においても注目されるようになってきています。
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