「黄金の丘」コート・ドールの南側のエリアに位置するコート・ド・ボーヌ地区はすぐ北にあるコート・ド・ニュイと比較されることが多いが、こちらはニュイ地区とは逆に、世界屈指の白ワイン産地として広く知られている。
コート・ド・ボーヌ地区の最も有名なワインと言えば、ほとんどのワイン愛好家は、「モンラッシェ」と答えるだろう。
アレクサンドル・デュマが言ったという「モンラッシェは脱帽し、跪いて飲むべし。」という言葉は、ワイン愛好家の中では特に有名である。まさにこのモンラッシェには、そう思わせるほどのオーラが感じられる。
それ以外にもたくさんの銘醸畑が存在し、この地区に非常に多様性に富んだ世界屈指の素晴らしいクオリティのワインが存在するという事実は、コート・ド・ニュイ地区と同様である。
ちなみに特級畑(以下、グラン・クリュ)であるモンラッシェは、「ピュリニー・モンラッシェ村」と「シャサーニュ・モンラッシェ村」という、二つの銘醸地にまたがって存在しているというのも、非常に興味深い。
これら二つの村にはそれぞれ異なる土壌が広がっており、生まれるワインのキャラクターにも土壌からくる違いが現れている。それはモンラッシェにおいても同様で、どちらの村に属するブドウが使われたかによって、同じモンラッシェでもその性質は異なる。さらに、「誰が造ったのか」がそこに加われば、特級畑のワインでさえも、そのクオリティと販売価格に大きな差が生じてくるのだ。そういう意味でも、ワインというのは、本当に奥が深い飲み物である。
コート・ド・ボーヌ地区にはその他にも、モンラッシェと同様にグラン・クリュである「コルトン・シャルルマーニュ」や「ムルソー」等、愛好家垂涎の白ワインが目白押しだ。
「ムルソー」に関して言えば、日本においても昔からとても人気の高いワインで、私がこれまで働いてきたいくつかのレストランでも必ずと言っていいほどワインリストにオンリストされていたし、ワインスクールの講座にいらっしゃる受講生の中でも、兼ねてからムルソーが好きだ、という方が多くいらっしゃった。
それほど人気の高いムルソーであるが、実は「グラン・クリュが存在しない。」というのも何か興味深い。しかしここには、世界最高峰の白ワイン生産者が多く存在している。
ここまででご紹介したものは、白ワインとして世界的な評価を得ているものばかりであるが、もちろん赤ワインでも有名なものが存在するのがこのコート・ド・ボーヌ地区であり、「ポマール」や「ヴォルネィ」の赤ワインも絶対に忘れてはならない存在だ。コート・ド・ニュイ地区の名だたる赤ワインにも、充分に匹敵するクオリティの高さは、多くの専門家からも高い評価を得ている。
最後に、もし皆さんが、フランス ブルゴーニュ地方のワイン生産地を巡る旅をするならば、「ボーヌ」は、多くの方々にとってその旅の拠点とするのに相応しいと考えられる。ここには、あの有名な「オスピス・ド・ボーヌ」があり、村中のあらゆる場面で、ブルゴーニュワインの試飲ができたり、美味しい郷土料理をいただけるブラッスリーやビストロが点在している。まさに「ブルゴーニュワイン」を最大限に満喫できる場所である。
そう言う私も、ソムリエ資格を目指してワインの勉強している時、ここに初めて訪れた。そしてその時のワクワクした記憶は、今でも鮮明に残っている。
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