白ワインの産地として頂点に君臨し、『三銃士』の著者アレクサンドル・デュマが「ひざまづき、脱帽して飲むべし」と称賛したモンラッシェ。フランス語で「山(Mont)」+「禿(Rachet)」つまり「禿げ山」を意味し、樹木が育たない土地であったため、こう呼ばれるようになったと伝えられています。
この偉大な特級畑モンラッシェを分け合うように擁する二つの村が、ピュリニー・モンラッシェとシャサーニュ・モンラッシェです。
ピュリニー・モンラッシェ
ドメーヌ・ルフレーヴなどがこの地に本拠地を置き、グラン・クリュを4区画、プルミエ・クリュを17区画、「世界最高峰の白ワイン」と称賛される産地です。石灰質が多く豊富なミネラルと酸を湛えたワインを生み出す産地として圧倒的な存在感を放っています。人口500人程度の小さな村の西側には「ブラニィの丘」があり、その斜面にブドウ畑が広がっています。
シャサーニュ・モンラッシェ
白のイメージが強いですが、フランス有数の石の産地として有名で、畑の下層には大きな石、その上に広がる粘土質土壌がピノ・ノワールの栽培に最適で、赤ワインも多く生産されています。ミネラル感が豊富で端正な味わいのピュリニー・モンラッシェに対し、柔らかく優しい味わいが魅力です。
この二つの村には、5つの偉大なグラン・クリュが存在します。
どちらがピュリニー側でシャサーニュ側か、完璧に覚えるのは難しく、ソムリエ試験等でも度々出題されますが、5つのグラン・クリュにはどのような違いがあるのでしょうか。
モンラッシェ(ピュリニー・モンラッシェ/シャサーニュ・モンラッシェ)
凝縮された果実味とシャープな酸、豊富なミネラル感、長く続く余韻が完璧なまでに調和。他を圧倒する品格と芳醇さを兼ね備えた白ワインの頂点です。
ピュリニー側の畑はMONTRACHET、シャサーニュ側の畑はLE MONRACHETと定冠詞をつけて呼ぶのが一般的です。
シュヴァリエ・モンラッシェ(ピュリニー・モンラッシェ)
最も斜面上方で、南東向きの急斜面に位置し、非常にミネラリーで繊細なワインが作られ、モンラッシェと並ぶ世界最高峰の白ワインです。
ビアンヴニュ・バタール・モンラッシェ(ピュリニー・モンラッシェ)
やや粘土質が多い土壌で、豊かな果実味がありながらも繊細さの感じられるワインを生み出します。
バタール・モンラッシェ(ピュリニー・モンラッシェ/シャサーニュ・モンラッシェ)
土壌は茶色の石灰岩で、5つのグラン・クリュの中で最も重厚で果実味が感じられる、豊満なスタイルが特徴です。
クリオ・バタール・モンラッシェ(シャサーニュ・モンラッシェ)
わずか1.57haと最も面積が小さく、小石混じりの石灰質土壌から複雑で繊細、エレガントなタイプのワインを生み出します。
実はグランクリュのネーミングが非常にユニークで、このような逸話が残されています。
「その昔、騎士(シュヴァリエ)である領主様と、その妻以外の女性に男の子(庶子=バタール)が生まれました。
騎士には嫡男がいたものの、戦死してしまったため、この庶子を後継ぎとして城に迎えることにしました。
それを村人たちが喜んで「ようこそ(ビアンヴニュ)」と歓迎したので、びっくりして赤ん坊が泣いた(泣く=クリオ)と言い伝えられています。」
わたしは、この話をフランス滞在中に現地の人に教えてもらいましたが、この逸話を詳しく知りたい方は、『黄金丘陵(コート・ドール)―ブルゴーニュ・ワインの故郷』(柴田書店、山本博著)をご覧になって下さい 。
※地図の出典 Bourgogne‐wines.jp
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