メドック地区サン・ジュリアン村に本拠地を構えるメドック格付け第2級のシャトーであり、レオヴィル・ラス・カーズ、レオヴィル・バルトンとともに「レオヴィル3兄弟」として有名なシャトー・レオヴィル・ポワフェレ。近年ではレオヴィル3兄弟の中で筆頭と言われた、レオヴィル・ラス・カーズの評価を凌駕するヴィンテージも出てきています。
1638年、地元の名士として知られていたジャン・ド・モアティエ氏がこの土地を購入したことからシャトーの歴史は始まります。1740年、モアティエ家の娘婿であったアレクサンドル・ド・ガスク・レオヴィル氏がこの土地を相続し、シャトーの改装や畑の改革を行い、所有畑は120haというメドック地域で最大のシャトーとなったといわれています。
メドック最上のワインを目指し、オーク・バレル(樫樽)を採用したり、より小粒のブドウを採用しワインの凝縮度を高めたりと様々な改革を行いました。現在では当たり前のように多くの生産者が行っていますが、実は彼が苦悩の末生み出した手法だったのです。
そして1789年のフランス革命や政府により土地の収用命令が出されたことなどによって、最終的には1840年にこのガスク家の土地は3分割される事になります。それによりこれまで一つのシャトーとして歩んできたレオヴィル家のシャトーは、レオヴィル・ラス・カーズ、レオヴィル・ポワフェレ、そしてレオヴィル・バルトンの3つに分かれ、各々の道を歩む事となったのです。
ちなみにシャトー・レオヴィル・ポワフェレの名称の由来ですが、シャトーを継承した一族の娘がジャン・マリー・ド・ポワフェレ男爵と結婚し、その事から「ポワフェレ」の名称が採用される事になりました。
レオヴィル・ポワフェレは他のレオヴィル同様に2級の格付けを得て後、エルランジェ男爵と当時のカントナック・ブラウンの所有者であったアルマンド・ラランドに売却され、1979年からはキュブリエ家の一人であるデディエ・キュブリエがオーナーとなっています。
ディティエ・キュヴリエ氏は格付けシャトーとして、常に先頭を率いるワイン造りを目指します。最新の醸造技術を用いたワイン造りを行い、大規模なブドウ樹の植え替え、セラーの近代化、ワインコンサルタントとしてミッシェル・ローラン氏を招聘したりと、様々な改革を行っていきました。
これらの取り組みにより、ワインの品質は格段に向上していき、これに伴い市場での評価も上昇していきました。これを証明するように2000年以降、全てのヴィンテージにおいて パーカーポイント90点以上を獲得するという極めて安定した実力をみせています。
また、レオヴィル・ポワフェレの特筆すべき点は、立地と土壌にとても恵まれているということです。
ジロンド川に近く、ラス・カーズと地続きの水捌けの良い砂礫質の土壌は、小川を挟んでポイヤックのラトゥールに続いています。メドックで最も長熟ワインである、ラス・カーズ、ラトゥールと同じ土壌を持ち、非常に重厚な熟成向きのブドウが育つ理想的なメドックならではの土壌です。
ロバート・パーカー氏「ボルドー第4版」では
「レオヴィル・ポワフェレの可能性について博識なボルドー人に尋ねると、ほとんど誰もが口をそろえてポワフェレにはメドックで最も深遠といえる赤ワインを生み出せる土壌と能力があると答える。 それどころか、中にはレオヴィル・ポワフェレの土壌はサン・ジュリアンの第二級シャトーのどこよりも優れているという人もいる。」と評価しています。
シャトー・レオヴィル・ポワフェレはレオヴィル・ラス・カーズやレオヴィル・バルトンと比較される事が多いですが、傑出したテロワールの良さに加えて、様々な改革を積極的に実施しており、品質面、価格の面から見ても非常にお値打ちなシャトーといえます。サン・ジュリアン地域のワインにしてはメルローの比率が高く、ボリュームと上質なタンニン、豊かな果実味を持ち、まさに長期熟成向きです。長い熟成を経たワインは、スパイシーで妖艶。価格が高騰する前にぜひ購入しておきたいシャトーです。
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