マルケ
マルケ州は、イタリアの中東部の州で、北はエミリア・ロマーニャ、西はトスカーナ、ウンブリア、南はアブルッツォ州と接し、アドリア海沿いに南北に伸びています。この地方は、紀元前にローマ帝国の支配を受けた後、ビザンチンの統治を経て教皇領となったこともあり、ルネッサンス期には、洗練された宮廷文化を花咲かせた地域としても知られています。 また、農業が重要な産業になっています。海岸線に沿った帯状の地域と数百キロに及ぶアベニン山脈の高い尾根などから、海から山へ、山から海へと吹く風、川の流れに沿って吹く風がミクロクリマを生み出し、多くの特徴のある幅広いレンジのワインが造られています。 この地方でのブドウ栽培は、紀元前2世紀頃から始まり、土地の商人であったピチェーノ人によって発展してきました。それは、この地方が海の向こうのギリシャ世界とアペニン山脈の反対側のエトルリアとの中間にあったという地理的条件によるものです。
マルケ州で最もよく知られるワインは、ヴェルディッキョ、薄緑色がかった麦藁色で、上品な果実の香りを含み、後口にわずかな苦味を残す白ワインです。アンコーナ県イエージを中心とする広い地域と標高の高いマチェラータ県マテリカを中心とする地域で造られています。古くは、ローマ法王に献上されるワインでした。この他、マルケ州には、近年注目される赤ワインがあります。アンコーナを中心に造られるモンテプルチャーノ種主体のコーネロは近年DOCGに昇格しました。紀元前3世紀古代ローマにアルプスを越えて攻め入ったカルタゴの将軍ハンニバルが、戦場で病気になった馬に飲ませたというエピソードの残る、古くからこの地域で造られていた赤ワインです。同様にモンテプルチャーノ種とサンジョヴェーゼ種を使用し、この州のさらに広い地域で造られるロッソ・ピチェーノもあります。近年マルケ州では、白ワイン、赤ワインともに高品質のワインが造られるようになってきていますが、価格は非常にリーズナブルであり、コストパフォーマンスの良いワインが多くあります。今後さらに生産技術が改良され、生産量が増えれば、イタリアを代表するワイン産地になっていくことも可能な州ということができるでしょう。
アブルッツォ ― モリーゼ
現在のアブルッツォ州とモリーゼ州は、1965年までは同一の州で、ともに山がちで農業と畜産業が中心であり、ワイン造りにおいてもよく似た州であるということができます。
地域的な特徴としては、隣のマルケ州同様、海岸に面していて、海岸には、アドリア海に垂直に落ち込む崖が連なっており、ブドウ作りは、海岸線の狭い地域と内陸部のあまり標高の高くない地域に限られます。
アブルッツォ州は、イタリアの中東部、東はアドリア海に臨み、北にマルケ州、西にラツィオ州、南にモリーゼ州と接し、イタリアを北から南に走るアペニン山脈の最も険しい地域に当たり、グラン・サッソ(2914メートル)が聳え、内陸部は、アブルッツォ国立公園に指定されています。
海岸線が長いものの、漁業よりも農業が盛んで、牧畜業の地としても知られています。
この地方で最も生産量の多いモンテプルチャーノ・ダブルッツォは、広い地域で造られるワインで、品質的にもかなり差があります。また、トレッビアーノ・ダブルッツォも州の全土が指定地域となっています。
モンテプルチャーノ・ダブルッツォの生産量は、近年増え続け、1億本を超える量に達していますが、標高が500メートルを超えない(南向き斜面は600メートル)の丘陵もしくは高原で作られるブドウを使用し、固有の特徴を有する地域もいくつかあります。北のテラーモ地区、またテラーモとロゼート・デッリ・アブルッツィの間の地域は、サブゾーンとしてコッリーネ・テッラマーネとして認められ、2003年DOCGに昇格しています。 アブルッツォ州のワインは強くて優しく、アブルッツォ人の気性と同様であるといわれます。つまり、頑固だが優しい、というこの地方の気候風土からなる性格がワインにも現れています。
モリーゼ州は北をアブルッツォ州、西をラツィオ州、南をカンパーニャ州と接する州で、東部はアドリア海に面し、西部にはアペニン山脈の高い山々が連なり、内陸的な印象の強い州です。
アブルッツォ州と同一の州であったことから、ワイン造りにおいても共通点が多くあります。白はトレッビアーノ種主体、赤はモンテプルチャーノ種主体で、近年アリアニコ、ファランギーナ、グレコ・ディ・トゥーフォなどカンパーニャ州の品種も多く栽培されるようになりました。DOCは3つで、カンポバッソとアドリア海の間にあるビフェルノ、そして州の最も内陸部のペントロ・ディセルニア、カンポバッソとイセルニアにかけての地域で造られる新しいDOC、モリーゼがあります。
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