今回シャトー・フィジャックのオーナーファミリー、ブランディーヌ・マノンクールさん社長のフレデリック・フェイさんのセミナーを聞きながら、垂直でテイスティングする機会がありましたので、当社ソムリエのテイスティングコメント共にお伝えします。
シャトー・フィジャックはサン・テミリオンでも最も古いと言われるシャトーです。シュヴァル・ブランに隣接し、ポムロールとの境界に近く、シャトーを囲む41haのブドウ畑は、タイプの異なる3つの下層土を持つ丘があり、その起伏のある地形とそこを流れる小川の影響を受けたミクロクリマが特徴です。
現在のオーナーはマノンクール家。右岸で最も早い時期に土壌調査を行い、深い砂利と浅い砂利の土壌の下に粘土が広がることを発見し、メルロよりもカベルネ(フランとソーヴィニヨン)を多く含むブドウの品種配合は農学者でありエンジニアであったティエリー・マノンクール氏の先見の明によるものでした。
現在の栽培比率はメルロとカベルネ・フランが各40%、カベルネ・ソーヴィニヨンが20%。最も古いブドウの木は1921年に植樹されたもので、平均樹齢は35年。275,000本の一本一本を土壌、気候、植生に基づいて管理し、植え替えを行っているそうです。
シャトー・フィジャックでは、自然地域を保護し、敷地内には12ヘクタールにも及ぶ公園、牧草地や湖、樹木園や竹林、ウバメガシやコルクガシの周りに生えたヒース、3㎞も続く垣根と、ブドウの木の列を際立たせるマノンクール夫人の1,001本のチャイナ・ローズの茂みなどが点在しています。
ティエリー・マノンクールは、「大小を問わずこれらの生命の兆しを観察し、保護はするがコントロールはしない」という姿勢を貫いています。2013年に「自然野生生物保護区」に指定され、ISO14001認定も受けています。
また、シャトーでは3年がかりで醸造設備、オフィスやレセプションなどシャトーを刷新。グラヴィティ・フローを導入し、40個の円錐形のタンクで区画別の醸造に対応、熟成庫には900以上の樽を置くことができます。
パッチワークのような独特のテロワール、主要3品種を等分にブレンドする個性的なブレンド、様々な改革により、近年確実に品質が向上しており、2022年秋に行われるサン・テミリオンの格付けで、プルミエ・グラン・クリュ・クラッセAに昇格を狙っています。
ちなみに、サン・テミリオンの格付けからシュヴァル・ブラン、オーゾンヌ、アンジェリュスが離脱して、プルミエ・クランクリュ・クラッセAはパヴィだけ。
格付けについて、オーナーのブランディーヌ・ド・ ブリエ・マノンクールは「長年、多大な努力をしてきた。テロワールが認識される絶好の機会」、フェイ社長は「畑仕事、環境への取り組み、シャトー管理など多岐にわたる観点が審査される。我々は値段が上がる営業のために努力しているのではありません。格付けはフィジャックのテロワールを認識してもらうための有効なツール」と語っています。
昇格の期待が高まるシャトー・フィジャック。TERRADA WINE のソムリエのテイスティングコメントはこちら。
シャトー・フィジャック2000年
ドライフィグなどの熟したフルーツのアロマに杉・なめし革、カベルネ・ソーヴィニヨン由来のグリーントーンが、加わることにより心地良いアロマ。バランスが良く、丸みのあるタンニンで、飲み頃に差し掛かっています。どこか左岸らしさを感じる最高の熟成ボルドー。
シャトー・フィジャック2015年
カシス・ブラックチェリーなどフルーツのアロマが主体、ややインク、ミントやほのかなスパイス、樽由来のバニラやカカオのニュアンスを多層的に感じます。香りからは非常に熟度が高い印象を受け、タンニンはややこなれて丸みを帯びています。あと10年ほど熟成させると、最高の味わいになると予測されます。
シャトー・フィジャック2016年
ミックスベリーのコンフィ、スミレ、すり潰したスパイス、チョコレートなど香り高く、酸味・渋み・果実味の各要素が大きく、スケールの大きなワインです。今後、15年以上の熟成が必要だと思います。
シャトー・フィジャック2018年
香りの印象は2016と似ており、黒系フルーツ主体のアロマに、インクの様なニュアンスを感じ、非常にフレッシュな印象を受けます。豊富なタンニンと酸を感じ、現段階では、奥底に見える本質的部分が隠されている印象です。最初の飲み頃を迎えるまで、少なくとも10年以上の熟成が必要ではないでしょうか。今回、テイスティングしたワインの中で最もポテンシャルの高さを感じるワインです。
シャトー・フィジャックのオーナーであるマノンクール家は、サン・テミリオンに弟分ともいえるプティ・シャトーを2軒所有しており、その一つがシャトー・ド・ミルリーです。
サン・テミリオンから約3キロ東の、シャトー・トロロン・モンドに近い粘土石灰質プラトー(台地)にある0.8haの畑の栽培比率はメルロ90%とカベルネ・フラン10%。生産量はわずかに4000本。マノンクール家では「サン・テミリオンのロマネ・コンティ」と呼んでいるのもうなずけます。
ファーストヴィンテージは1943年。今回、セミナーの最中に当時のラベルを見せていただきました。いまでも、ティエリー氏が描いたクラシックなラベルをそのまま採用しているそうです。
親族や友人、一握りのレストランでしか味わえなかった幻のワイン。ルグランが独占契約しており、TERRADA WINE MARKETでしか手に入らない逸品です。
今回は2011年、2012年、2013年、2015年、2018年をテイスティング。
TERRADA WINE のソムリエのコメントはこちら
シャトー・ド・ミルリー2011年
やや赤系フルーツの混じったドライフルーツ、しおれた薔薇のニュアンス。タンニンは穏やかで、じんわりとした果実味を感じ非常に丸みのある味わいで、今、飲み頃を迎えています。エレガントさを感じさせ、個人的にローヌのエレガント系グルナッシュやブルゴーニュ好きの方にお試しいただきたい1本です。
シャトー・ド・ミルリー2012年
赤系と黒系をミックスしたフルーツのアロマ、心地良く感じるグリーンノートはやや冷涼な年を感じさせます。2012年は右岸にとっては良いヴィンテージだったという通り、12年の方がやや熟度の高さを感じさせます。酸や渋みも穏やかで飲みやすいですが、5年ほど熟成させて、エレガントなボルドーとして楽しみたい1本です。
シャトー・ド・ミルリー2013年
赤系果実、フローラルなニュアンスが感じられ、可憐な印象です。より新樽比率を高めた2013年ですが「濃厚・しっかり」といったイメージとはかけ離れた飲みやすく、癒しを与えてくれるボルドーワインです。
シャトー・ド・ミルリー2015年
カシスやブルーベリー、燻製ベーコンなど複雑身が増したアロマ。味わいはまだ若い印象を感じますが、既にバランスが取れており、凝縮した旨味がありつつあくまでもエレガントなスタイルです。
シャトー・ド・ミルリー2018年
砕いたブルーベリーやカシスに、赤い花、甘やかなスパイスのアロマ、杉、カカオのニュアンスも感じられます。香りや味わいから熟度の高さが見て取れる、今後の熟成がとても楽しみな1本です。
※シャトー蔵出しの受付期間は終了しました。
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