TERRADA WINE MARKETでは、先日ボルドー・プリムール 2023の販売開始を記念し、ルグラン・フィーユ・エ・フィス東京と共同で、オンラインセミナーを実施いたしました。
今回は、その内容を一部抜粋して、ご紹介したいと思います。
セミナーでは、ボルドー右岸を代表するCh. アンジェリュスのオーナーである、ステファニー・ド・ブアール・リヴォアル氏に、2023年ヴィンテージの特徴とその魅力をお伺いしました。
また、後半では、銀座レカン・グループ総支配人兼エグゼクティブ・ソムリエの近藤佑哉氏をお招きし、2023年ヴィンテージの6銘柄を試飲しながらテイスティングコメントをいただきました。
豪華ゲストによるオンラインセミナーの全編は、現在YouTubeにて公開中ですので、どうぞご覧ください。
テロワールを上手く表現した、ボルドー随一のシャトー
エチケットに描かれる鐘が印象深いCh. アンジェリュス。
ワイン愛好家にとって憧れの的であり、世界中にアンジェリュス・ラヴァーがいる人気のシャトーです。
Ch. アンジェリュスはボルドー右岸のサン・テミリオン地区に位置しています。
2012年の格付けで、プルミエ・グラン・クリュ・クラッセA(第一特別級A)に昇格したものの、2022年の格付けを辞退したことは記憶に新しいかと思います。
また、ワインに詳しくない方でも、ジェームズ・ボンドが活躍する007シリーズに度々登場し、2019年には007の限定ボトルも発売されたというのは興味をそそる話ではないでしょうか。
ワインの特徴としてはカベルネ・フランの割合が比較的高く、テロワールをうまく表現したボルドー随一のシャトーとしてその名を轟かせています。
今回は、そんなCh. アンジェリュスのオーナーである、ステファニー・ド・ブアール・リヴォアル氏にお話を伺いました。
「ラフランシ(解放)」と命名された2023年ヴィンテージ
Ch. アンジェリュスでは、2023年ヴィンテージを「ラフランシ(解放)」と命名しています。
これは、2023年ヴィンテージの性質である気難しさ、そして生産者が対峙しなければならなかった複雑でデリケートな気候条件に由来します。
2023年は、暖かな春ではあったものの、嵐や雨、さらにベト病が広がるなど、様々な困難がありました。
その後、比較的涼しい夏に続き、1週間ほどの猛暑がやってきました。
例年はあまり畑に介入しないCh. アンジェリュスですが、ぶどうの樹の勢いが強く、この年は様々な介入を行ったといいます。
収穫は平均的なタイミングで行われ、メルロー、カベルネ・フランともに果皮が厚く、素晴らしく成熟し、量としては非常に多くなりました。
「最初は正直、品質も量もどうなるかわからなかった」とステファニー氏は言います。
しかしながら、最終的に多くの困難を乗り越えて、品質・量とも非常に素晴らしいものになったことは、まさに「ラフランシ(解放)」と名づけるのにふさわしいでしょう。
Ch. アンジェリュス 2023のスタイル
では、実際にワインのスタイルはどのようなものになったのでしょうか。
Ch. アンジェリュスでは3つのワインをつくっており、セミナーではそのうち「Le Carillon de L’Angelus(ル・カリヨン・ド・ランジェリュス)」と「Chateau Angelus(シャトー・アンジェリュス)」について詳細に解説していただきました。
まず、Ch. アンジェリュス 2023のセパージュ(ぶどうのブレンド比率)は、メルロー60%、カベルネ・フラン40%*と、典型的なものになりました。
※オンラインセミナーの動画内では「メルロー40%、カベルネ・フラン60%」と記載がありますが、正しくは「メルロー60%、カベルネ・フラン40%」となります。記載内容に誤りがあり、誠に申し訳ございません。
特徴的なのは香りの純粋さで、さまざまなフルーツを感じることができ、表現豊かなワインだということです。
口の中に含むとブラックチェリーのような芳醇さがあり、構造はしっかりしていて、タンニンは繊細。余韻は長く、フレッシュさと緊張感のあるワインです。
興味深かったのは、アロマや口内のボリューム感が素晴らしい2001年ヴィンテージを想起させるというお話でした。
また、シャトーの改革について、2つ例をあげてお話いただきました。
Ch. アンジェリュスでは、2016年から目指すスタイルを変え、力強さとエレガントさのバランスがある中で、よりエレガント寄りにシフトしていきました。
もう一つ、 2018年から樽の使い方を変え、小さなバリックから、30ヘクトリットルの大樽(フードル)を多めに使うようにしました。
このフードルをカベルネ・フランに使うことによって、カベルネ・フランの繊細で純粋な香りが保たれるようになりました。
同時に、樽が大きくなることによって酸素との接触が少なくなるので、非常に繊細で正確性があって、フルーティーでフィネスに溢れたワインに仕上がります。
2023年は総じて難しくデリケートな年だったからこそ、土壌やぶどう品種、そしてそこに働く人間といった、テロワールがワインによく反映されたヴィンテージとなりました。
価格差は、品質の差なのか
ステファニー氏の解説のあと、2023年ヴィンテージの価格について、視聴者から興味深い質問がありました。
”前年と比較して、ボルドー全体的に2023年ヴィンテージはお求めやすくなるという傾向を伺いましたが、その価格差についてステファニーさんはどうお考えでしょうか?”
この質問にステファニー氏は真摯に答えてくれました。
まず、2023年と2022年ヴィンテージの違いはスタイルの違いであって、品質的には偉大な2022年ヴィンテージとほとんど変わりがなく、品質が下がったから価格が下がったわけではないということ。
その上で、価格を下げたのには政治的な理由があります。
例えば収穫量にしても、あるところはたくさん取れて、あるところはあまり取れなかったということもあり、様々な要素を考えなければなりません。
ボルドー全体のトレンドをよく見て、それに従ってCh. アンジェリュスも2023年ヴィンテージは比較的価格を安く出したそうです。
価格について包み隠さず、丁寧に答えてくれました。
テイスティングにより感じる、2023年ヴィンテージ
さて、ここで前半は終了となり、後半からは、銀座レカン・グループ総支配人兼エグゼクティブ・ソムリエの近藤佑哉氏をお招きして、2023年ヴィンテージの6銘柄を試飲いたしました。
◆テイスティング銘柄
<1st Flight:メドックより>
・Ch. Sociando Mallet
・Chateau Beychevelle
<2nd Flight:ペサック・レオニャンより>
・Domaine de Chevalier Rouge
・Domaine de Chevalier Blanc
<3rd Flight:ソーテルヌより>
・Le G de Chateau Guiraud
・Chateau Guiraud
ここでは、ソシアンド・マレのテイスティング・コメントをご紹介したいと思います。
近藤氏のコメントは非常にわかりやすく、表現力が豊かで大変勉強になりました。
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<外観>
若々しい、深いルビーレッド。
中心に黒みを帯びを帯びたコアがあって、果実の成熟度の高さが外観からしっかりと感じられる。
<香り>
ブラックフルーツや、紫のポイズンベリーのような凝縮感が高いフルーツの香りを中心にしながら、グラスから立ち上がるスパイシーな香りが特徴的。
タイムやクローブ、セージのようなセイボリーハーブ、 料理にも合わせられるハーブの香りがありながら、そこにブラックペッパーのようなスパイシーなトーンであり、クローブ、シナモン、リコリスのような甘苦いスパイスの官能的な香りが見事に立ち上がる。
<味わい>
舌先に当たったときの果実のふわっとした柔らかさがありながら、ピンと張ったテンションの効いた酸と、口の中を乾かせるような引き締まったタンニンがある。
社交的でありながら、しっかりとした奥行きを感じられる。
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まだ樽に入ったワインでありながらも、完成度が非常に高いことがおわかりになるのではないでしょうか。
ソシアンド・マレは、他の有名なシャトーに比べると手が届きやすい価格であるにもかかわらず、クオリティ自体は有名シャトーに引けを取らずレベルが高いので、プリムール初心者の方にもおすすめです。
残りの5銘柄に関しても詳細にコメントをいただいているので、続きはぜひYouTubeをご覧ください。
近藤氏が注目しているシャトーとは
テイスティングが終わると、近藤氏にいくつか気になる質問をしてみました。
”近藤さんが注目するシャトーを、メドック、ペサック・レオニャン、右岸でそれぞれ名前を挙げていただきたいです。”
上記の質問の回答として、テイスティングした銘柄以外に、ペサック・レオニャンからレ・カルム・ド・オーブリオン、そして右岸からはやはりCh. アンジェリュスの名前が挙がりました。
“プリムールワインは1本、3本、6本と本数を選べますが、何本単位で購入するのが1番楽しめますか?”
この質問に対して、ある程度本数をご購入いただいた方が、定点観測という意味での楽しさがあるのではないか、と提案する近藤氏。
ただし、ご自宅のセラーでは保管できる本数に限りがあるため、長期熟成させるとしたら、品質のしっかりしたTERRADA WINE STORAGEに預けることをおすすめいただきました。
最後に
今回は、2名の豪華ゲストにお招きし、生産者・ソムリエといった別の立場から、プリムール 2023に関する貴重なお話を伺えました。
まだ、一般の方には馴染みのないプリムールのシステムですが、市場に出た後の価格よりも安価で購入できたり、入手困難なシャトーのワインを早い段階で確約できたりと、プリムールならではのメリットに、興味を持っていただけたのではないでしょうか。
TERRADA WINE MARKETでは現在、ルグラン・フィーユ・エ・フィス東京より、今回ご紹介したCh. アンジェリュスやソシアンド・マレを始めとした著名銘柄が販売中ですので、ぜひご覧ください。
また、購入したプリムール銘柄は、365日24時間体制で温度・湿度のコントロールが行われ、ワインの保管・熟成に最適な環境を維持した、TERRADA WINE STORAGEをご活用ください。
プリムールで購入した銘柄の定点観測のために、長期熟成も見据えて、購入から保管までノンストップで対応できるTERRADA WINEをどうぞご利用ください。