2021年9月29日、私たち寺田倉庫のソムリエチームが、シャトー・マルゴーの蔵出しワインの販売に先駆けて、1999年のシャトー・マルゴーの他、今回初めて蔵出しとしてリリースされるパヴィヨン・ルージュ、パヴィヨン・ブランをテイスティングする機会に恵まれました。

総支配人補佐 オーレリアン・ヴァランス氏によるセミナーの様子をリポートします。

※2021年11月現在、蔵出しワインの販売は終了しています。

シャトー・マルゴーは文献によれば15世紀にはすでに存在しており、ワイン造りを行うため移り住んだ人々によって村ができ、現在ではシャトーの名前がそのまま村の名称になった歴史あるシャトーです。

シャトー・マルゴーを語る上で大切なのは家族計画であるということ。

常により良いものを造るために様々な意見を直接言いあえる風通しの良い環境、少数精鋭体制にこだわり、長きにわたって家族経営を貫いています。 

近年、他の生産者がニューワールドやボルドー以外の地区に進出している中、300年以上変わらず、シャトー・マルゴーのみに注力し、最高のワインづくりのために技術革新を行ってきました。

例えば、2010年からワインを守るためにパヴィヨン・ブランのボトルを透明なボトルから黒いボトルに変えたのだそうです。複数のコルクやヴィノロック、スクリューキャップなどで熟成の実験を行い、現在のコルク、ボトルに落ち着いたのだとか。

ヴァランス氏によれば、

技術革新にはどん欲に取り組み、「少しでもBetterなら変更する」という選択をするのがマルゴー流です。

 いまでは考えられないですが、シャトー・マルゴーでも以前は白ブドウも黒ブドウも一緒に栽培し、収穫していたそうです。ソーヴィニヨン・ブラン100%の白ワイン、パヴィヨン・ブランは、19世紀に「ソーヴィニヨンの白ワイン」として販売し、1920年からは「パヴィヨン・ブラン・ドゥ・シャトー・マルゴー」と名前を変えました。

興味深かったのは、パヴィヨン・ブランのある区画は1710年には赤ワインで、非常にアロマティックなブドウが作られる区画が含まれているそうです。テロワールとしては素晴らしかったものの、フィロキセラが流行したため、100年以上植樹しなかったとか。技術の進化によって、健全なブドウを造ることができ、白ワインに適していることからソーヴィニヨンに植え替えたのだそうです。ここにも、マルゴーの技術革新への努力を感じることができます。

パヴィヨン・ブラン 2017

シャトーでは、1700年代から白ワインが作られていたものの、パヴィヨン・ブランとして販売されたのは1920年。わずか12haの畑を20の区画に分けて醸造をしているそうです!

ソーヴィニヨン・ブランの味わいを表現するために新樽使用率をかなり制限し、バランスを重視して作られています。2017年ヴィンテージは、テイスティングした印象を一言で表すならば、フレッシュネス。濃縮された糖と引き締まった酸とのバランスが絶妙でリッチで上品な出来上がりです。

熟したグレープフルーツやレモン、白桃、ほのかなハーブ、可憐な白い花を思わせるアロマで、ソーヴィニヨン・ブラン特有の未熟さ・過熟感を一切感じさせません。旨味を伴った酸味や心地良い苦み、小石のような丸みを帯びたミネラル感、エレガントで非常に研ぎ澄まされており、ほのかな樽香をまとった洗練されたスタイルはソーヴィニヨン・ブランとしては、もはや別格です。

若いヴィンテージは刺身によく合うとのこと。確かに、酸はしっかりありながら、旨味、塩味があり、特に淡白な白身の刺身にはピッタリだと感じました。ソースをまとった魚料理には熟成したヴィンテージがおすすめです。

ちなみに、パヴィヨン・ブランの最大の市場は日本だとか。和食に合わせやすいからかなと笑っていらっしゃいましたが、食事によく合うワインで、レストランなどに持ち込むと楽しみが倍増しそうです。

パヴィヨン・ルージュ 2010

パワフルな黒ベリー系のアロマ、ミントやグリーンペッパーなどのスパイス、新樽率は60%で樽由来のアロマは突出しておらず、香りの構成はバランスが良いと感じます。果実味・酸・シルキーなタンニンの各要素が豊かで、余韻は長く、熟成ポテンシャルの高さを感じました。グレートヴィンテージ2005年や2009年に準ずる年で5年、10年後にそのエレガントなアロマやタンニンがどう変貌するかが楽しみな仕上がりです。

個人的には、カベルネ・ソーヴィニヨンの比率を上げて、よりマルゴーに近づけた味わいになったのはポジティブな変化だと思います。

シャトー・マルゴー 1999

ドライフィグ、ドライフラワー、腐葉土、なめし革など典型的なブーケ(熟成香)を感じる、

ビロードのような滑らかなタンニン、フルーツの甘みやエキス感はたっぷりと感じられます。喉を通る際の引っ掛かりを感じないスムースな飲み心地で、味わいの構成からも、今が飲み頃です。

1999年のマルゴー地区はベト病が発生したが、とても良い年。近隣のパルメやローザン・セグラなども素晴らしい出来だとか。今飲みたいワインをお探しならこのヴィンテージがおすすめです。

ヴァランス氏によれば、

1999年はブルゴーニュとボルドーの橋渡しをするようなワイン。

1998年は偉大な年で99年よりも凝縮しているが、今飲むにはクローズしています。1997年、1999年、2004年はチャーミングで美しく熟成されており今飲むのがおすすめです。

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記事著者

寺田倉庫ソムリエチーム

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