ボルドー・ポムロール地区のトップシャトーの一つ、シャトー・ラフルール。わずか4.5haの畑から生まれるワインは、日本ではあまり見かけることはありません。しかし、その実力は同じポムロールに属するペトリュスを時に凌駕するとも言われています。その品質の高さ、希少さから、現在ではポムロール地区を代表する高級ワインとして知られています。

シャトー・ラフルールは1872年、アンリ・グレウル氏が現在シャトー・ラフルールのある地所を購入し、ブドウ園の開墾を始めたことから始まります。その後、グレウル家の娘と結婚したアンドレ・ロビン氏が継承し、やがて娘のテレーズとマリーに受け継がれました。姉妹はワインの品質を更に上げる事に尽力します。シャトー・ラフルールは目立たないながらも堅実なワインを造り続けてきましたが、1950年代のシャトー・ラフルールの流通価格は、メドック格付け5級のシャトー・グラン・ピュイ・ラコストと同程度であったという記録が残されています。

では、いつから、どのようにして、シャトー・ラフルールの価値が高まっていったのでしょうか。

そのきっかけは1975年、著名な評論家ロバート・パーカー氏がシャトーに訪れたことでした。彼はワインを飲んだ瞬間、そのクオリティに驚愕します。それ以降、シャトー・ラフルールの熱烈なファンになり、

彼の著書ボルドー第4版では「ラフルールがどの点でもペトリュスに匹敵する、並外れたワインであることを知ることができるまで、何度も2つのワインを並べて味わうことができた私は幸運だった。アロマの観点から言えば、ラフルールは多くのヴィンテージでペトリュスよりも複雑である。これは間違いなく樹齢の高いカベルネ・フランのおかげである。」と絶賛、シャトー・ラフルールの優れたポテンシャルを評する記事を幾つも世に出しました。

さらに1981年、ペトリュスのオーナーでもあるジャン・ピエール・ムエックス社がラフルールの販売権を継承し、2001年から現当主のバプティスト・ギノドー夫妻がすべてを管轄するようになりました。

ペトリュスでは重粘土に植えられたメルロが最高の素材であるのに対し、ラフルールの土壌は深い砂利質で、豊富な鉄分や、非常に重要な成分であるリンとカリウムを含んでいます。複雑な土壌には、メルロとカベルネ・フランが約半分ずつ植えられ、区画別に醸造することで唯一無二の個性を引き出しています。冷涼な土地や気候ではなかなか気難しかったカベルネ・フランですが、地球温暖化と栽培技術の向上により果実が十分に熟するようになり、フランが本来持つ複雑さや高貴さが余すところなく表現されるようになったのです。

そして「パンセ・ド・ラフルール」というセカンドワインの生産にも着手します。シャトーのわずかな生産量から考えると、この試みは驚くべきことでした。2019年からはセカンドワインではなく、ラフルールの中にあり特にポムロール的な土壌を持つ僅か0.7haから生まれる独立したワインとして、レ・パンセと名づけられています。ラフルールのチームが同じ情熱と哲学を持って管理し、その希少性からも世界中の愛好家にとって垂涎のレアワインとして注目を集めています。

シャトー・ラフルールはペトリュスと双璧をなす存在であると同時に、ポムロールの地で孤高の存在へとなりつつあります。2000年以降は常に高得点を叩き出す一方で、価格はシャトー・ペトリュスの1/3程度で推移しており、非常にコストパフォーマンスの高いシャトーといえます。日本に入荷するのはわずか数百本とも言われており、見つけたらぜひ手に入れたいシャトーです。

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