ここ数年、ヨーロッパではロゼワインの人気が益々高まり、白ワインや赤ワインの消費量を上回るほどの勢いがあるという。フランスを訪問した際、スーパーマーケットのワインコーナーや、ワインショップの陳列棚を見てみると、見事に白、ロゼ、赤ワインが均等量陳列されていたし、もしかしたらロゼが一番多いようにも見えた。
日本でも、近年ロゼワインの大々的なプロモーションを行ったり、ロゼワインの素晴らしさを見直そうという動きが続いているが、今のところまだまだ発展途上と言える段階ではないだろうか。
飲食店のワインリストを見ても、ロゼワインの欄はスパークリング、白、赤と比べて圧倒的に少なく感じるし、グラスワインに関しても、チョイスは「白か赤」というお店がほとんどなのではないだろうか。よって、ゲスト側からしても、グラスワインにロゼがあるという認識がまだまだ薄く、ロゼワインをこちらから提案すると、一瞬戸惑いの表情をされる方が多い。とはいえ、複数の飲食店のワインリストを拝見させていただくなかで、ロゼワインの選択肢は徐々に増してきているという実感はある。
私自身に関して言えば、長年、コース料理それぞれのお皿に合わせたワインペアリングを提案してきたが、毎回、ロゼワインをどこかのタイミングで1銘柄入れることがほとんどである。
なぜならば、ロゼワインが入ることで、ワインペアリングコースの流れの中にバリエーションを与え、抑揚をつける役割を果たしてくれる他、「この料理にはどう考えてもロゼワインしかない。」というふうに考えることも多いからだ。
つまり、必然的にロゼワインの出番は必ずあるし、料理との相性を考える上で、必要不可欠だと思っている。
前置きがずいぶんと長くなってしまったが、今回お話しするフランス・プロヴァンス地方は、世界的なロゼワインの産地として非常に有名であり、フランスのロゼワイン生産量のかなりの割合を占めている。中でも特に有名なアペラシオン(原産地呼称)として、この地方で最大面積を誇るコート・ド・プロヴァンス、そしてコトー・デクサン・プロヴァンス、カシイ、バンドール、パレット、ベレ等がある。
その多くがロゼワインの生産地として有名だが、カシイに関して言えば、白ワインも素晴らしく、「ブイヤベース(漁師風魚介の煮込み)」と非常に相性が良いとされる。そしてバンドールの赤ワインは、特に高い評価を得ており、仔羊のローストに香草のフレーヴァーを付けて炭焼きにしたような料理と合わせたい。
最後に、地中海に浮かぶ島、コルシカ島についてのお話をさせていただくと、ここはイタリアにも近いことから、ニエルキオのようにイタリアを想わせるブドウ品種も存在し、プロヴァンスとはまた違ったワイン文化を持つ。そして、ナポレオンの生誕地として知られるアジャクシオや、パトリモニオの赤ワインが特に有名だ。
コルシカのワインは、日本ではまだまだ馴染みがないかもしれないが、「海の中の山」とも言われるこの土地のワインは、レストランでのワインペアリングとしても、新しい発見と可能性を充分に感じている。
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