ウンブリア
ウンブリア州は、イタリア中部に位置し、アペニン山脈の西に広がる盆地を中心とする内陸の州で、イタリア半島部分で唯一海に面していない州でもあります。しかし、トラジメーノ湖、コルヴァーラ湖、それにテヴェレ川を初めとする多くの河川があり、これに丘陵、谷間が蛇行して続き、この地方の典型的な光景を数多く目にすることができます。
古くからイタリアの「緑の心臓」と呼ばれ、緑が多く、自然の豊かなこの地方では、集約型の農業が営まれ、小麦、トウモロコシ、ジャガイモ、オリーブ、ブドウなどが作られています。面積は隣のトスカーナの半分以下、人口も4分の1と小さな州ですが、起伏に富んだ土地の7割が丘陵地帯で、点在する街は、標高3百~6百メートルに位置し、その多くは城壁都市となっています。古くからテヴェレ川を始め、ローマに通ずるさまざまな交通路が州内を走り、古代ローマ時代の建築物が残されています。
北部はエトルリア時代からの歴史を誇るペルージャ、南部は製鉄業を中心に栄えたテルニが中心に、イタリアの守護聖人、聖フランチェスコの街アッシジ、エトルリア時代から栄えたオルヴィエート、中世の街グッビオ、スポレートなどの歴史と伝統に育まれた美しい街が点在しています。
ウンブリア州のワインは、トスカーナ州とほぼ同様、サンジョヴェーゼ、トレッビアーノ種を使用していますが、南に位置し、気候的にも穏やかであることから、ソフトな味わいのワインが多くあります。
1990年にDOCGに認められたトルジャーノ・ロッソ・リゼルヴァは、サンジョヴェーゼ種主体でカナイオーロ種を加えて造られ、繊細でバランスの取れた、しっかりとした味わいの赤ワインになります。肉の煮込み料理他、この地方の名物料理、仔豚の詰め物料理、ポルケッタや黒トリュフを使用した山鳩の料理などにも合います。
次に、ペルージャ県モンテファルコを中心に造られるサグランティーノ・ディ・モンテファルコは、この地方独自の黒ブドウ、サグランティーノ種を100パーセント使用します。古くは甘口ワインとして知られていましたが、近年は辛口の長熟ワインとして評価されるようになり、1993年、DOCGに昇格しました。濃いルビー色でラズベリーを思わせる甘い香りを含み、しっかりとした味わいの赤ワインになります。ウンブリア南部のオルヴィエートを中心に造られるオルヴィエートは、古くはローマ法王や貴族たちに愛されたワインです。 この他ウンブリアには、コルヴァーラ、トラジメーノといった湖周辺で造られるDOCワインもありますが、丘陵地帯で造られるワインがほとんどです。
ラツィオ
ラツィオ州は、イタリアの中西部、ティレニア海沿岸に位置し、東部にはアペニン山脈が走り、北はトスカーナ州、南はカンパーニャ州と接します。州都ローマは、古代ローマ文化発祥の地であり、ローマ帝国の中心、既に2千年以上前からワイン造りが行われており、キリスト教の聖地ヴァチカンではキリスト教の儀式に使われていました。ラツィオ州は、州全体が歴史的遺産の宝庫であり、州都ローマはイタリアの政治の中心になっており、また、観光業を初め、各種工業、商業も盛んです。ローマ周辺は、緑豊かな丘陵地帯になっており、小麦畑や牧草地が広がります。傾斜面ではブドウやオリーブが栽培されていてその半分以上が、丘陵地帯となっており、古代ローマ時代からワイン造りが盛んでした。この州には、多くのDOCG、DOCがあり、ほぼ全域に点在しています。 カステッリ・ロマーニ地方は、ローマのすぐ南に続く丘陵地帯で、ラツィオ州のワイン造りの中心地となっており、フラスカティなどの白ワインは、古くは古代ローマの時代から知られるワインでした。
一方北部は、カステッリ・ロマーニよりも面積が広く、エスト・エスト・エスト・ディ・モンテフィアスコーネなど多くのDOCを抱えていますが、生産量はあまり多くありません。
主なワインに、フラスカティがありますが、今日のローマ人には欠かせない日常ワインです。辛口から甘口まであり、ローマに近いアルバーノ湖の北側で造られます。マルヴァジア種とトレッビアーノ種主体で、繊細でなめらかな味わいがあります。よく冷やした辛口は、魚介類のパスタやリゾット他の魚料理に、スペリオーレは、ローマの名物料理、サルティンボッカ(仔牛肉のソテー)などの白身肉の料理にも向きます。
近年DOCGに昇格したチェザネーゼ・デル・ピーリオは、フロジノーネ県ピーリオとセッローネの丘陵中心に造られます。繊細な香りを含み、まろやかな味わいの赤ワインです。
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