ヴァッレ・ダオスタ
イタリア北西部の端に位置し、アルプス山脈を隔てて北はスイス、南西はフランスと国境を接する州であり、スイスとの国境にマッターホルン、モンテ・ローザ、フランスとの国境にモンブランと4千メートルを超える名峰を仰ぐ山岳地帯です。人口は12万人と極めて少なく、ワインの生産量もイタリアの全生産量のわずか0.7パーセントです。
州のほとんどが山岳地帯であるこの州の各地に見事な氷河が点在し、美しい自然を持つ国立公園としては他に例を見ません。この州では、14種のブドウから約20種類のワインが造られていますが、ブドウ畑は谷間に段々畑風に点在し、ブドウ樹はより陽当たりの良い南向きの斜面に植えられ小規模生産者がほとんどです。日中は太陽の熱を吸収し、夜はその熱を保ってくれる岩のおかげで地中海性気候同様にブドウが育ち、特に高所に位置する畑は多くの熱を得るため谷底の平地の畑に比べて3~4℃も気温が高くなります。さらに日中と夜とで大きな温度差が生じることから、ブドウの皮が厚くなり充分にアロマを含んだワインを生むことができます。
この州のブドウ畑は、約6百ヘクタールと少なく、生産されるワインも年間100万本程。山の斜面に猫の額ほどの小さな畑が点在しているので、ワイン造りには専門知識の他各々の畑の性格をよく知ることや経験も必要になります。約40キロの谷間には22ヶ所のブドウ生産地があり、生産者は協会を作っています。訪問者に直接ワインを販売している生産者が多く、中には自園内で生産したワインを全て販売してしまう生産者もいます。
フランスとピエモンテ州の中間に位置することから、使用するブドウはその両地方からのものが多く、赤用ではガメイ、ピノ・ネロ、メルロー、シラー、ネッビオーロ、ドルチェット、ペティ・ルージュなどが植えられ、白用には、ピノ・ビアンコ、ピノ・グリージョ、シャルドネ、ミュラー・トゥルガウ、モスカート、ブラン・ドゥ・モルジェなどの品種が植えられています。また、以前は各地のDOCに分かれていたため、モルジェ、ヌス、シャンバーヴェ、トッレッテ、ドンナス、アンフェール・ダルヴィエなどの地域名の記載も認められています。
ロンバルディア
ロンバルディア州は北イタリアの中部から北部にかけての州で、北はアルプスを境にスイスと接する湖水地帯から南はポー河中流域に至る豊かな平野を抱える地域です。州都ミラノは平地に作られた城壁都市で、今日イタリアの金融とファッションの中心となっているが、古くは湿地帯で川もなく一年の長い期間霧に覆われる地域でした。
ブドウを作る地域は限られており量もあまり多くありません。ワインを生産する地域は、大きく三つに分けることができます。北アルプスに入り込んだソンドリオを中心とするヴァルテッリーナの谷間の陽当たりの良いところでは、古代ローマ時代からワイン造りが行なわれていました。厳しい気候条件ながら、地元でキアヴェンナスカと呼ばれるネッビオーロ種から多くの長熟ワインが生み出されています。
次に、南のアペニン山脈にかかるパヴィアの丘陵地帯オルトレ・ポー・パヴェーゼのワインも近年知られるようになり、スプマンテはDOCGワインに昇格しました。
最後に、ミラノ県のベルガモからイゼオ湖にかけての丘陵地帯は、ピノ種、シャルドネ種から優れたスプマンテ・クラッシコ(瓶内二次発酵)、フランチャコルタが造られています。
DOCGに認められているヴァルテッリーナ・スペリオーレは、北部の谷間にあるソンドリオを中心に、キアヴェンナスカと呼ばれるネッビオーロ種から造られる赤ワインで、スペリオーレにはサッセッラ、グルメッロ、ヴァルジェッラ、インフェルノ、マロッジャの5つのサブゾーンが認められています。また、このブドウをアマローネ同様に冬の間室内で乾燥させ、干しブドウ状にして糖度を高めてから醸造するスフォルツァートもDOCGに認められています。濃いめのルビー色で、独特の果実やエステルの香りを含み、なめらかな味わいの長期の熟成に耐えるワインになります。
フランチャコルタはロゼやサテン(白ブドウのみ)もDOCGに認められています。オルトレ・ポー・パヴェーゼはロンバルディア州の6割以上を生産する地域で、コストパフォーマンスの良いワインを多く生み出しています。ピノ・ネロ、モスカート、バルベーラ、クロアティーナ、ピノ・グリージョ、リースリングなどのブドウが植えられています。
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