寺田倉庫×山梨大学 ~ワインの保管熟成に関する研究~
ワイン事業を展開する寺田倉庫では、“ワインライフをより豊かに”というミッションのもと、2018年4月に山梨大学ワイン科学研究センター教授の柳田藤寿氏と共同研究を開始しました。共同研究第2弾となる今回は、「ワイン保管における温度・湿度・照度の重要性」をテーマに、フランス産高級赤ワインを対象に、温度・湿度・照度の異なる5つの環境においてワインの成分・品質の変化および熟成状態を分析する研究を行いました。
*2014年-2017年に第1弾共同研究を実施。デイリーワインを対象に「ワイン保管における温度の重要性」について検証し、寺田倉庫でワイン保管温度の基準としている14℃がワインの熟成が進み、保管に最適な温度であることが立証されました。
(検証環境)
1、寺田倉庫ワインセラー保管(温度14℃、湿度70%、暗室)
2、リカーショップなどのセラー環境を想定(温度14℃、湿度70%、光あり)
3、家庭用ワインセラーを想定(温度14℃、湿度管理無し、暗室)
4、押入れ・床下収納等の自宅保管を想定(温湿度管理無し、暗室)
5、リビング・物置部屋等の自宅保管を想定(温湿度管理無し、光あり)
(対象ワイン)
Domaine Trapet Chambertin Grand Cru 2013/1996
Château Margaux 2013/Château Lynch Bages 1996
研究開始から1年が経過した2019年に行った官能評価(テイスティング)では、湿度管理によって香りに大きな違いがあること、またヴィンテージによって熟成度合いが異なることがわかりました。(前回テイスティングレポートはこちら)
今回は、研究開始から2年経過後の最終テイスティングの様子とともに、山梨大学での数値分析による考察を併せてご報告します。
*色・香り・味・酸度・タンニンの変化を調査する成分分析と、ソムリエによるテイスティングをもって味覚分析を実施。
*分析は全3回:2018年研究開始時、2019年 研究開始から1年経過時、2年経過時
(官能評価)
テイスティングは、コンラッド東京 エグゼクティブ ソムリエ 森覚氏、俺のフレンチTOKYO 長谷川純一氏、ロオジェ 井黒卓氏 3名に、天王洲アイルまでお集まりいただき、万全なコロナウイルス感染症対策のもと実施しました。
1~5の各検証環境に2年間保管されていたものを銘柄別に比較し、温度・湿度・照度環境による味わいの違いについてコメントを頂けましたので、ご紹介いたします。
森 覚 氏 コンラッド東京 エグゼクティブ ソムリエ
「デイリーワインで温度検証を行った第1弾の研究時から保管環境の違いによるワインの官能評価差異を実感していましたが、今回の研究で高級ワインになればなるほど、更に気を使うべき点が多いことを思い知らされました。特に寺田倉庫での保管環境が良いことは明白でしたが、逆に家庭用ワインセラーの環境とは香りや味わいに大きな差異を感じる結果となり、大変驚いております。温度を一定に保つだけでなく、湿度の重要性にも高級ワインは特に気を使うべきであり、長期熟成を前提とする保管の場合には不可欠な条件と感じました。また、照明に関しては味覚的な官能評価差異に加えて、ラベル劣化という影響も考慮に入れる必要性があるという結果も大変興味深かったです。」
長谷川 純一 氏 俺のフレンチTOKYO
「今回のテイスティングを通して感じたことは、環境による違いが3回目で顕著に出たということです。ラベルの変色により商品価値が外観から低下してしまうため光の影響は大きく、また、光によって酸味の低下が促進され甘味が引き立ち、短命なワインの印象となり易いと感じました。温度・湿度に関しては、元々のワインのポテンシャルが高いために2回目まではそこまで大きく感じなかったのですが、今回は明らかに、健全では無いフレーバーを感じたり、味わいのバランスが大きく崩れたりと、正常に保管されたワインとの大きな差を感じました。特に湿度のコントロールは自宅では困難なので、長期的なワインの保管は難しいことを痛感しました。改めて、「ワインは生き物である」ということ、日々のワインに触れる機会をより大切にしていこうとシンプルに感じました。」
井黒 卓 氏 ロオジェ
「今回の官能検証で、オールドヴィンテージのワインほど温度による変化に弱いこと、またタンニンの優しい品種ほど変化が早いことが確認できました。レストランで提供する場合、比較的強いカベルネ系品種のワインであれば大きな差はないものの、ピノノワールなど繊細なものは家庭用セラーでの保管は適していません。また、ヴィンテージワインは家庭用セラーなどでみられる『開閉が多く、温度変化が激しい』保管場所は不向きだといえます。第1弾研究の結果をふまえると、家庭用セラーでの過度な熟成を嫌う場合は、低めの温度設定10℃以下にすることで急激な熟成を防ぐこともできます。すぐ飲むのであれば問題はないのですが、3年以上寝かせるのであれば考慮すべきです。私が勤めるロオジエでは、飲み頃を迎えるまでは温度が一定の倉庫で熟成させ、すぐ飲むワインに関しては12-13度のセラーを使用しています。せっかく購入した高級ワインが気付いたら劣化していた、と残念な結果にならない為にも、温度・湿度・照度の各条件が揃った空間で保管することが望ましいと思います。ハッピーワインライフを過ごすためにもそれぞれのワインにあった保管を!」
柳田藤寿 教授 山梨大学ワイン科学研究センター (数値分析による考察)
「家庭用ワインセラー・室温保管においては、その温度の違いによって酸化の進行度合いが異なること、また保管温度がワインの色素の退化に影響し、赤ワインの色特性の変化を起こすことが着色度の分析から推察されます。また、一般的には低温で保管することで酒石が析出されるといわれていますが、湿度条件においてもそれに影響を与える可能性があることがわかりました。これまでの研究からもワイン保管における重要性は明らかでしたが、今回は湿度がいかに重要であるかがわかりました。一方で照度の有無は大きな影響はなかったものの、ラベルの色落ちが顕著に出ました。」
柳田教授と3名のソムリエのコメントにも共通しているように、今回の研究をもってワイン熟成にはその保管温度だけでなく湿度も重要な要素であること、そしてラベルへの影響という点で照度にも配慮が必要であることがわかりました。
TERRADA WINE STORAGEの保管環境は温度14℃±1℃、湿度70%±10%で管理しています。“お預かりするモノの価値を高める”保存保管を実現すべく、ワインの保管熟成により適した環境を整え、ワインラヴァ―の皆様に安心してワインをお預けいただけるよう今後も品質向上に取り組んでまいります。
柳田教授、森ソムリエ、長谷川ソムリエ、井黒ソムリエ、ご協力ありがとうございました。
目的に合わせて多様な保管方法から選択できる寺田倉庫のワイン保管サービス。1本99円から預けられるクラウド管理と、自身で出し入れ自由なレンタルワインセラー。温度14℃±1℃、湿度70%±10%、醸造所の地下セラーのような環境を365日24時間維持・管理しています。ワインを育てる楽しみを体験してみては如何でしょうか。
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