カンパーニャ
カンパーニャ州は、東にアペニン山脈、北にラツィオ、南にバジリカータ州と接し、西は広くティレニア海に面しています。
州都ナポリを中心とするこの州は、80パーセント以上が山岳系の地形で、平地は少ないものの、豊かな土地と温暖な気候のために古くから他民族の侵入が絶えず、その度に異文化が取り込まれ、ナポリ中心に独特の文化が育まれました。
食においては、パスタやピッツァなどこの地方から生まれ、世界に知られるようになった食べ物が多くあります。観光地としても知られている風光明媚なナポリ湾や、対岸のソレント、カプリ島、さらに東方のヴェスヴィオ火山、そして、今からおよそ2千年前にこのヴェスヴィオ火山の噴火によって埋まった遺跡、ポンペイ、さらにアマルフィ、チレントなどの海岸沿いの暖かい気候の地域は、世界的リゾート地として良く知られています。
ナポリから内陸に60キロほど山を越えたアヴェッリーノ周辺では、古くからブドウ栽培が行なわれ、紀元前にギリシャから運ばれた品種が今日でも多く残されています。赤用ブドウでは、長熟ワインを生むアリアニコ種、ピエディ・ロッソ種が主体で、白はフィアノ種、グレコ種、ファランギーナ種、コーダ・ディ・ヴォルペ種などが多く造られています。
アヴェッリーノ周辺で造られるタウラージは、南イタリアで最初にDOCGに認められたワインで、アリアニコ種(ギリシャ伝来の意)主体で造られ、力強く、長期の熟成に耐える赤ワインであることから、バローロ、バルバレスコと並ぶ三兄弟と呼ばれたほどです。濃いルビー色で、独特の濃密で心地好い香りを含み、しっかりとした構成のあるワインです。
仔羊や肉類のグリル、この地方の料理、ビステッカ・アッラ・ピッツァイオーロ、熟成硬質チーズなどに向きます。
同地域で造られるフィアーノ・ディ・アヴェッリーノは、2003年DOCGに昇格し、イタリアで最も長期の熟成に耐える白ワインの一つといわれています。古くは「アピアヌム」と呼ばれ、古代ローマ時代に既に知られるワインでした。さらに内陸で造られるグレコ・ディ・トゥーフォは、同様に2003年、DOCGに昇格した白ワインです。既に古代ローマ時代に良く知られるワインだったといわれます。グレコとはギリシャのことで、ギリシャ伝来のブドウから造られるこのワインは、標高6百メートルのモンテフスコの村を中心に造られています。このほか、ヴェスヴィオ火山の麓で造られるラクリマ・クリスティも歴史に残る逸話で知られるワインです。ファレルノも古代ローマ時代から知られるワインです。また、イスキア島で造られるワインもあります。
バジリカータ
この州は、イタリア半島のちょうど土踏まずに当たる地域で、ティレニア海とイオニア海に面した部分は少なく、内陸に膨らみ、そのほとんどの地域が丘陵地帯で乾燥しています。風化した石灰岩がむき出しになっている貧しい地域ですが、ブドウ栽培の歴史は古く、ギリシャから最初にブドウが伝えられた土地の一つといわれ、中世中葉までは、「ルカーニア」と呼ばれていました。かつてこの地域のブドウ作りは、硬貨や詩集にも入れられるほど栄えていたといわれます。
11世紀から13世紀にかけて、ビザンチン帝国とフェデリコ2世の統治下で一時的に文化、芸術が栄えましたが、その後は土地が砂漠化したこともあり、衰退の一途を辿りました。 バジリカータ州で唯一知られるワインは、アリアニコ種100パーセントで造られる、アリアニコ・ディ・ヴルトゥレ。カンパーニャ州で造られるタウラージの弟分ともいわれる力強いワインです。このワインはヴルトゥレ山一帯の火山性土壌で栽培されるアリアニコ種から造られますが、古くは王侯貴族の食卓を飾るワインでした。1971年にDOCに認められ、スペリオーレは、2010年DOCGに昇格しました。標高が450~500メートルである地域では、気候が冷涼でブドウの収穫時期も遅く、熟成ワインが多く造られます。一方のヴェノーザを中心とする地域は、プーリア州との境まで広がり、温暖で傾斜地が多く、火山性とは異なる独特の土壌で、しっかりとした力強いワインが造られます。ワインはルビー色からガーネット色までがあり、繊細な香りを含み、調和の取れた赤ワインになります。
このワインは、南イタリアにあって、品質的にも独自性の部分でも将来的に大きな可能性を持つワインの1つです。
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