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近年ますますその価値を高めている年代物のワイン。「ワインは熟成させるもの」「古ければ古いほど美味しい」などともよく耳にしますが、実際に生産から30年~50年が経過したワインの味わいはどのようなものなのでしょうか。
今回、寺田倉庫ソムリエチームは長期熟成を経たプレミアムワインをテイスティングする機会に恵まれました。
ここでは一部のテイスティングコメントと共に、オールドヴィンテージワインとはどのようなものなのか、また、熟成ワインを飲む上での注意点やその味わいの特徴などを詳しくご紹介します。
オールド・ヴィンテージ・ワイン(バックヴィンテージワイン/古酒)とは
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まずはワインの熟成について、そしてヴィンテージ物のワインとはそもそもどういうものであるのか、という点について簡単にご説明します。
ワインの熟成、賞味期限について
一般的なワインには、賞味期限・消費期限の記載がありません。適切に保管されていた未開封のワインには、その保存期間に制限がないのです。 適切に保管されている場合に限りますが、ワインはボトル内で腐っていくのではなく、熟成されていきます。
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時間の経過とともに酸味やタンニン(渋み)などの成分が、旨味を感じられる成分へと変化していき、より深みある香り、味わいを備えて本来の魅力を発揮するのです。
ワインはいつまで飲めるのか
もちろん賞味期限が無いからと言って、無限に美味しく飲むことができるわけではありませんが、ワインは同じヴィンテージの同じ銘柄であっても個体差があるので、一概にいつまで、と定義することは残念ながら不可能です。
ワインの名前、生産者、ヴィンテージをメモして、ワインを長らく飲んでいて経験のある人や、近くのワインショップのソムリエなどにアドバイスを求めるのが良いでしょう。
ワインは何年から「古酒」になるのか
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明確な定義は設けられていませんが、エチケット(ラベル)に表記されている生産年から10~15年以上が過ぎたワインは、「ヴィンテージもののワイン、ヴィンテージワイン」と呼ばれることが多くなってきます。
プロや愛好家の間では、生産から20年以上が経過したワインを「オールドヴィンテージワイン」「バック・ヴィンテージのワイン」「古酒」などと呼ぶことが多いかもしれません。
古いワインはなぜ高いのか
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ヴィンテージワインはなぜ高価であるのか、疑問に思われることが多いのではないでしょうか。
ワインは嗜好品としてどんどん消費されていくので、生産後の年数の経過と共に数が減っていきます。
希少価値が高まるため、値段も上がっていくことが多いと言えます。
また、繊細で取り扱いに注意の必要なお酒であるため、熟成にかかるコストも影響します。
熟成による見た目や味わいの変化とその特徴
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見た目(外観)
白ワイン、スパークリングワイン
若いうちは輝きのある溌溂としたレモン色~黄色であるのに対し、熟成を経ると黄金色や琥珀色に変化していきます。
スパークリングワインは、発泡が和らいでいきます。
赤ワイン
若いうちは紫がかったルビー色やガーネット色などであるのに対し、熟成するとオレンジがかった赤色やレンガ色に変わっていきます。
更に熟成のピークを過ぎるにつれて、色素がポリフェノールなど、液内の他の成分と重合していくことなどから透明に近づいていきます。
香りと味わい
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白ワイン
使用されているブドウ品種によっても異なりますが、若いうちは柑橘類やトロピカルフルーツなどの果物や、花やハーブを思わせるアロマであるのに対し、年月の経過と共にドライフルーツや蜜、トーストやナッツ類などの濃厚で奥行きのあるアロマが生まれていきます。
味わいは、上記が風味としても感じられると共に、酸味の角がとれてまろやかになっていくことが多いです。
赤ワイン
フレッシュな段階ではラズベリーなどの果物や植物のような香りが主体であるのに対し、熟成を経るにつれてドライイチジクやレーズン、キノコ、腐葉土やタバコ、皮革などのアロマが現れます。
味わいとして大きな変化がみられるのは、渋みであるといえます。
酸化がゆっくりと進むにと同時に、タンニンの成分は色素などと重合し、「澱」となって瓶底に溜まっていくのです。
酸味、渋みともに角が取れていくので、口に含んだ時の刺激、インパクトは落ち着き、全体的にまろやかな味わいへと変化します。
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ワインは古い方がおいしいのでしょうか?
これについては、フレッシュで酸味のキリっとした味わいが好みで合ったり、落ち着いていてバランスの整った味わいが好みで合ったりと味覚は人それぞれであるため、好み次第でしょう。
ただ、良い熟成を経たワインは、複雑性のあるアロマや風味、奥行きのある味わい、そして長い余韻を備えていることが多いので、「熟成のピーク」にあたった際は多くの人が極上の時間を過ごすことができるでしょう。
ヴィンテージワインを飲むときの注意点
ワインは基本的に生き物に喩えられるくらいデリケートですが、オールドヴィンテージのワインは、一層その取扱いに注意が必要です。
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澱の扱い
まず、古いワイン、特に赤ワインには、熟成にしたがい蓄積されていく沈殿物(澱)が見受けられることが多いです。
摂取しても健康への害は無いものとされていますが、口当たりが良くなく、美味しいものでは無いため、ボトルを揺らさないように気を付けましょう。
もし移動などによって液内に澱が舞ってしまっている場合は、ボトルを立てた状態で2日~1,2週間ほど落ち着かせましょう。
抜栓
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次に、ヴィンテージワインのコルクは、ワイン(液体)同様に非常に繊細で脆くなっていることが多いです。
抜栓の途中でコルクが折れてしまったり、欠片が液内に入ってしまったりしないよう、専用のオープナーや補助器具の使用をおすすめします。
通常のソムリエナイフのみを用いる場合は、根本までしっかりとスクリューを挿し込み、ゆっくりと時間をかけて引き上げてください。
デキャンティング
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古いワインを飲む際は、澱や抜栓時に混入してしまったコルクの破片を取り除くためにデキャンティングをすることも多いですが、熟成のピーク~ピークを過ぎていることが予想されるヴィンテージ・状態の場合、ワインをデキャンタに注ぐ際に一気に酸化が進み、劣化に近い状態に到達してしまうこともあります。
ヴィンテージとコルクや瓶口からの香りなど、分かる範囲で状態を確認した上で、デキャンティングの有無を決めましょう。
また、実際に味わう際は、まずグラスは回さずに、そっと香りをとって、口に含みましょう。
理由は上述の通りです。
テイスティングレポート
試飲した銘柄の中から一部をご紹介します。
1975 ペトリュス Petrus 750ml / シャトー・ペトリュス Chateau Petrus
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アロマ
カシス、乾燥させたプラムなどの黒い果実、カラメルソース、キノコ、トリュフ、腐葉土、インク、鉄
味わい
凝縮感のある黒系果実の風味に加えて熟成由来の深みある湿った土のようなニュアンスが感じられ、依然として角がしっかりとしたタンニンがありました。
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コメント
ペトリュスは黒ブドウであるメルロー種を主体にカベルネ・フラン種をブレンドして造られる、銘醸地ボルドー・右岸のプレミアムワインです。
現在の市場価格は、ヴィンテージなどによって異なりますが1本あたり30万円~100万円を超えることもあります。 液体の色味は茶を帯びたガーネット色で淵はわずかに透き通ってきた段階。
奥行きのある風味をたのしむことができ、今が飲み頃、もしくは今しばらくの熟成が可能であると判断される場合が多いと感じました。
TERRADA WINE MARKETで販売中のペトリュスはこちら
※売り切れの際はご容赦ください。
1990 ヴォーヌ・ロマネ 1er クロ・パラントゥ Vosne-Romanee 1er Cros Parantoux 750ml / アンリ・ジャイエ Henri Jayer
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アロマ
レッドチェリー、スグリ、梅、還元的な要素、漬物、ジビエ香、ドライフラワー、シナモンや山椒などのスパイス、黒糖
味わい
ドライフラワーのブーケや落ち葉など、乾燥した風味とカラメルや黒糖を思わせる旨味が特徴的でした。
グラスに注いですぐのタイミングは還元臭や野性味のある風味が気になりましたが、徐々に和らぎ、繊細かつ存在感のある余韻を感じることができました。
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コメント
フランス・ブルゴーニュの伝説に名を遺したアンリ・ジャイエの、唯一無二の1級畑クロ・パラントゥ。
アンリ・ジャイエのワインは100万円を優に超える価格で取引されます。
外観は褐色を帯びた、輝きのあるガーネット色。
テイスティングコメントは様々で、ピークを超えて旨味が抜けてきている(水っぽくなっている)と言う者もいましたが、古酒好きは熟成によるしっとりとした旨味をたのしみました。
2001 モンラッシェ・グラン・クリュ Montrachet Grand Cru 1500ml / DRC(ドメーヌ・ド・ラ・ロマネ・コンティ) Domaine de la Romanee-Conti
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アロマ
熟した柑橘類、マッシュルーム、イースト、ヨーグルト、酢、ナッツ、ヨード
味わい
酸が強く、ホワイトマッシュルームやヨーグルトを思わせる風味が印象的。
果物や樽由来のバニラなどの健全な風味が感じられなかったため、適切な熟成とはなっていない、劣化した状態であると判断しました。
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コメント
「世界で最も高価なワイン」のトップに君臨する、DRCが手掛けるワインの数々。
このモンラッシェは年間3,000本ほどしか生産されない、白ワインの最高峰に位置するキュヴェです。
今回はマグナムボトルを試飲しました。
外観は黄金色を超えて黄土色に近く、全体的に透き通った色味に変化した状態。
コルクは健全な状態ながら、液面はやや下がっていたため、テイスティング前から劣化を疑っていました。
わずかな埃臭さと旨味の要素の抜けた状態から、ブショネ、もしくは何らかの原因で本来よりも早くピークを超えてしまっていたと思われます。
良い熟成をさせるための条件と保管サービス
どれだけ高い値段のつくワインでも、適切な状態で保管されていなければ、良い熟成を期待できません。
最後にワインの保存に適した条件をご紹介します。
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ワインの熟成に適した条件
13℃~15℃の温度帯
温度変化の少ない、涼しい場所で保存すること。
冷蔵庫での保管などで懸念される、激しい温度変化などによって起こる、液漏れリスクの低減も期待できます。
湿度は65%~80%
コルクは乾燥により縮む材質のものが多いため、収縮により生まれる隙間から入り込む空気によってワインが酸化してしまう危険性があります。
直射日光や蛍光灯の光を避ける
紫外線によって品質が低下し、不快な匂いが発生することがあります。
周囲に匂いがきついものは置かない
コルクが外の匂いを吸収することで、ワインにまでその匂いが移ることがあります。
安定した場所で寝かせて保存
瓶を立てて保存するとコルクが液体に触れない状態が続き、乾燥して収縮したコルクと瓶の間の隙間から空気が入ることで、液体が酸化しやすくなる可能性があるためです。
また、振動が加わることで劣化に繋がることもあります。
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以上のように徹底した環境での保管をしていても、ワインは非常に繊細でデリケートなお酒です。
たとえば植物製のコルクは特にカビの付着によってワインの液体にまで不快な臭いが移ってしまう「ブショネ」が起きやすくなりますし、他にも様々な原因からワインの劣化の可能性はゼロにはなりません。
とはいえ、せっかく手に入れたワインを美味しく飲むために、より良い条件下で保管をしておきたいですよね。
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ワイナリーでの生産~購入を経て手元に届き、保管を開始するまでにどのような状態であったのか。
また、前述の通りどのワインにも起こり得る可能性のあるブショネなどを考慮すると、どれだけ良い環境でワインを保管していても、劣化のリスクはゼロにはなりません。
特にバックヴィンテージのワインは定期的に状態を確認し、吹きこぼれの跡や液面の高さなどを把握できると安心です。
飲み頃を迎えるまでのワインの品質維持・管理にお困りの際には、TERRADA WINEのサービスをぜひご検討ください。