ボルドーには家族経営を貫くシャトーが少なからずありますが、その中でもシャトー・ラ・コンセイヤントは150年もの長期にわたり家族経営を続けている、数少ないシャトーです。
しかしその一方で彼らは最新の醸造技術をどこよりも早く取り入れ、非常に品質の高いワインを安定的に供給している事でも知られています。

ここではシャトー・ラ・コンセイヤントに焦点を当て、長い歴史やワイン造りに対する信念を考察していきたいと思います。

シャトー・ラ・コンセイヤントとは?基本的な情報をご紹介

シャトーの歴史は1700年代にまで遡り、この当時、ボルドーの港湾都市、リブルヌでビジネスを成功させていた商人カトリーヌ・コンセイアン女史が、この地所を購入したところから始まります。卓越したビジネスセンスを持っていたというこの女性の名前を由来とするシャトー・ラ・コンセイヤント。
まずはプロフィールをご紹介します。

一帯に広がる、恵まれたテロワール

右岸のスターワインに挙げられる「プティ・ヴィラージュ」、「ヴュー・シャトー・セルタン」と隣接しているシャトー・ラ・コンセイヤント。畑は「シャトー・シュヴァル・ブラン」や「シャトー・ペトリュス」に隣接しています。

約12haのブドウ畑はシャトーのすぐ近くを通る道路で2つに分けられています。一方は北側、醸造所の周りに広がり、もう一方は南側、「シャトー・シュヴァル・ブラン」の隣に位置し、粘土、砂利、砂が混じった土壌がよく似ています。
ここはサン・テミリオンとポムロルの境目でもあり、粘土質土壌から成る畑からは、複雑で厚みのある、豊かな味わいが醸し出されます。

さらに最も北側のメルローが植えられた区画は、「シャトー・ペトリュス」の畑に隣接したところにあるとのこと。一帯がいかに恵まれたテロワールを有しているか、想像に難くありません。

右岸の頂点に君臨する高貴なシャトー シュヴァル・ブラン

伝統の継承と革新が共存した栽培・醸造

創業以来不変の畑で行われる栽培

以前は醸造所前に広がる区画にマルベックも植えられていましたが、現在では全て抜かれており、メルローとカベルネ・フランの2種類のブドウが植えられています。メルロが80%、カベルネ・フランが20%を占めます。

1956年の霜で引き抜いたカベルネ・ソーヴィニヨンを再び植えるプロジェクトもあるようで、2018年のベト病(ミルデュー)の被害で認証を得るための申請を止めてしまったっそうですが、オーガニックで栽培しています。

平均樹齢も約40年と非常に長く、一番古い樹では1958年に植えられたものが残されています。 近年はビオディナミ農法も取り入れるなど、さらなる高みを追求しています。

現状維持に留まらない醸造スタイル

ブドウは収穫後、除梗の前後に選果が行われます。
2015年からは収穫後1日はコンテナ冷蔵庫に入れて保管をし、アロマとタンニンの抽出を潤沢にするそうです。更に、低温浸漬を行うことで果汁や色素を抽出します。

アルコール発酵を行うタンクは、2012年にステンレス製からコンクリート製へ変更しています。より細かい区画毎に分けて醸造して個性を出したいという狙いから、小さめのタンクを導入しています。この温度管理されたコンクリートタンクで発酵を行います。

2015年からはバリック・アンテグラルという手法も取り入れたといい、これはブドウ果実を直接樽にいれて醸造・熟成まで行う方法です。

ポムロール地区では、メドックなどと比較して樽の中でマロラクティック発酵を行うところが多いといい、シャトー・ラ・コンセイヤントでも2019年から試験的に取り入れています。プリムール販売でのテイスティングの際、通常よりも樽の香りが強く出ることで期待度が高まることもあるのでしょう。

マロラクティック発酵の終了後、それぞれの区画に合ったものを使用するために合計5社から仕入れた新樽比率約50~80%の新しいフレンチオーク、30%の一度使用した古樽に入れて、約18カ月の熟成に入ります。

澱引きは3カ月に1度、コラージュは卵白と、この点では非常に伝統的な手法を現在でも維持しており、熟成が終了の後、瓶詰めとなります。
生産量は約35,000本~40,000本です。

味わいや飲み頃の目安

「ブルゴーニュのグラン・クリュ」を思わせる香り高く妖艶な味わい

卓越したテロワールから生み出されるワインは非常にエレガントで、液体によく溶け込んだ、きめの細かいタンニンと深い色調を備えます。
スミレ、ブルーベリーなどの黒系果実のアロマ、ピュアな果実味と、決して強すぎない樽香が非常にバランス良く調和されている点が非常に魅力的。

特徴的な紫色のキャップシールの色は、シャトー・ラ・コンセイヤントを象徴するともいえるこのスミレのアロマを現しています。 さらにこの高い品質はどのヴィンテージでも安定しており、一貫したスタイルを維持している点がとても高く評価されています。

飲み頃はいつ?

優し気な側面も魅せる妖艶なアロマに反し、味わいは典型的な長期熟成タイプであるといえ、口の中にいつまでも残る余韻は非常に心地よいものです。

そのヴィンテージから20年~30年程は飲み頃といえるのではないでしょうか。古酒の愛好家の方は、30年~40年の熟成を経たものでもそのしっとりと滑らかで芳醇な味わいをおたのしみいただけます。

ワインの熟成方法の種類は?熟成後の色や味わい、香りの変化

シャトー・ラ・コンセイヤントが手掛ける銘柄

デュオ・ド・コンセイヤントというセカンドワインを手掛けています。
こちらについては、「稀少なセカンドワイン」の章にて詳細を後述しております。

シャトー・ラ・コンセイヤントの歴史

その歴史はこのシャトーの特徴ともいえるもので、長きにわたりこのテロワールと味わいを大切に守り抜いてきたことがわかります。ここでは長く、深みあるシャトーの歴史をご紹介します。

シャトー・ラ・コンセイヤントの歴史

18世紀~20世紀

1700年代

当時、港湾都市リブルヌでビジネスを成功させていた商人カトリーヌ・コンセイアン女史が、この地所を購入しました。
女性でありながら優れたビジネスセンスを発揮することから、周囲から「アイアンレディ」と呼ばれた彼女は、早速この地所を整地していきます。

最終的にはその面積を12haまで広げ、彼女が造ったこのブドウ畑の区分は数百年が経過した現在まで続いています。彼女がいかに先見の明を持つ人物であったかを伺い知る事が出来ます。

1871

100年程度の間オーナーの数回の変遷を経て、ボルドーのネゴシアン会社であるニコラス・フレール社がシャトーの経営権を買い取りました。
この社のオーナーであるルイ・ニコラスとニコラス・ニコラスのニコラス兄弟は、この地所が素晴らしいテロワールを有している事に気付き、これを投資の対象としてではなく、自らの手で発展させていく事を心に誓います。

これが現在まで続くニコラス家による経営の始まりでした。
エチケットに大きく描かれた“N”の文字はこのニコラ家を表していることでも有名です。

1880

ルイ・ニコラスの子供であるルイ・ニコラス2世が経営のバトンを引き継ぎます。
彼がシャトーを管理した時期は多難な時代であり、彼はフィロキセラと戦わなければなりませんでした。

しかしその一方で、彼はシャトーの知名度を上げる点で、先代以上の功績を残すことに成功します。
例えばそれまでシャトー・ラ・コンセイヤントは欧州の近隣国でしか販売されていませんでしたが、彼は独自の人脈を用いて、その販売網をロシアにまで広げました。

その中で彼はシャトー・ラ・コンセイヤントの様な小さなシャトーが海外へPRを行う事の難しさを体感し、一つ一つのシャトーが独立して売り込むのではなく、複数のシャトーで協力し合う事の必要性に気付きます。

1900

ルイ2世は「ポムロールワイン生産者組合」を立ち上げ、その初代会長に就任しました。
当時よりポムロールは非常に小さな造り手が多かった為、この組合の設立が、多くのシャトーが多方へ輸出するきっかけとなりました。
彼はシャトー・ラ・コンセイヤントのみならず、ポムロールのワインビジネスの発展においても大きな役割を果たしたのです。

1921

ルイ2世は勇退し、その息子であるルイ3世とその親族であるアンリ・ニコラス氏にシャトーの経営が引き継がれます。
彼らも先代が守ってきたワイン造りを踏襲すると共に、その品質を更に向上させていきました。

1960

ルイ3世とアンリは、シャトーの経営権を個人から持ち株会社へと移行します。これにより経営基盤が更に安定し、ワインの品質も一層の高まりをみせ、シャトー・ラ・コンセイヤントは栄華を極めました。

1971

フランシス・ニコラスとバーナード・ニコラスの二人が、ルイ3世とアンリ氏から経営のバトンを引き継ぎました。
4代目の当主となった彼らが最初に取り組んだのは、シャトーの大規模な改装です。

これまで同族経営を続けてきた為、大規模な資金調達が難しかったシャトー・ラ・コンセイヤントでしたが、持ち株会社へ移行して約10年間集めた資金を用いて、最新の知見を取り入れた醸造設備を敷設します。

例えば、当時のポムロールではまだ珍しかったステンレスタンクをいち早く導入しました。
小規模な生産者が多いポムロールでは、「昔ながらの製法でワインを造るべき」と考えていた人たちも少なくなかった為、このステンレスタンクの導入には反対の声も上がったと言われています。

しかしフランシスとバーナードの2人は自身の信念を貫き、このタンクの導入を決めます。結果的にワインの品質は更に安定する様になり、市場での評価も一層高まりました。

21世紀

2001

2人は更に、外部からの風を取り入れる事を決意し、有能な青年であるジーン・ミッシェル・ラポルテ氏を雇用しました。
一般的に長い歴史を持つシャトーのオーナーは外部からの知見を良しとしない場合も少なくないと考えられますが、フランシスとバーナードは次第にラポルテ氏に多くを委ね、彼に未来を託すようになりました。

重責を与えられたラポルテ氏は、若いながらも最新のワイン造りに精通しており、この知見を活かし、例えば収穫量を大幅に制限する事でワインの品質を高めていきました。

2003

ポムロールを代表する名シャトーとしての地位が更に盤石なものとなってきたことを見届け、フランシスとバーナードは4代目のオーナーを退き、5代目のオーナーとして、バートランド氏とジーン・バルミ氏にそのタスキを委ねます。

2007

5代目のオーナーたちはラポルテ氏と協働でワイン造りに取り組み、セカンドラベルであるデュオ・ド・コンセイヤント(Duo de Conseillante)をリリースします。
40年ぶりにシャトーの大改装も実施していきます。

2012

新設のバットルームを目玉とする、シャトーの大改装が完了しました。
シャトー・ラ・コンセイヤントのブドウ畑には18の区画が存在しますが、それぞれの区画ごとに別個のバットを用意し、これを用いて醸造を行うようになったのです。

多大な設備投資を要しましたが、これによりテロワールを最大限に引き出すことができるようになり、その品質は更なる高みへと引き上げられました。

2013

更に、彼らはミッシェル・ローラン氏をワインコンサルタントとして招聘し、彼の持つ豊富な経験と最新の知恵をワイン造りに取り入れていきます。

2015

これまで責任者として活躍してきたラポルテ氏が勇退し、今度は隣接するシャトーであるシャトー・プティ・ヴィラージュ(Chateau Petit Village)のディレクターであったマリエール・カゾー女史をヘッドハントし、彼女にワイン造りの全権を委ねました。

彼女も樽の中でマロラクティック発酵を行うなど新しい手法を積極的に取り入れ、その品質向上に日夜励んでいます。 このようにしてシャトー・ラ・コンセイヤントは、伝統と最新の技術の両方を重んじる姿勢によって、ポムロールを代表するシャトーとしての地位を揺るぎないものとしてきました。

シャトー・ラ・コンセイヤントの当たり年と参考価格

当たり年

1961年、1989年、2015年、2020年、2021年、2022年

2020年にはかの有名なワイン評論家のロバート・パーカー氏が100点満点を付けています。
安定した品質で定評がありますが、近年は各評価誌でも文句無しの高得点を連発しており、更なる人気、需要の高まりを感じさせます。

パーカーポイントの評価による影響と高得点がつけられるワインの特徴

参考価格

ヴィンテージ、保管状況などにより変動しますが、市場に出ることの多いヴィンテージの範囲ですと、おおよそ28,000円~50,000円でしょう。

シャトー・ラ・コンセイヤントの商品一覧はこちら
※売り切れの際はご容赦ください。

稀少なセカンドワイン、デュオ・ド・コンセイヤント

デュオ・ド・コンセイヤントもファーストラベルのセパージュとおおよそ同じ割合で、メルロ約80%、カベルネ・フラン約20%です。
比較的樹齢の若い樹から取れるブドウを用いると共に、新樽の比率を抑えることで、早飲みも可能な味わいに仕上げています。

このセカンドラベルにもワイン造りの高い基準が保たれており、コストパフォーマンス良く、彼らの理想とする味わいを愉しむことができます。

シャトー・ラ・コンセイヤントは1871年から5代にわたり同族経営を続けているシャトーです。
この間に世界は戦争や大恐慌を経験しましたが、ニコラス家は動じることなく、バトンを次の世代へと繋いできました。

一方で彼らは伝統に甘んじることなく、常に最新の知見と技術をそのワイン造りに取り入れてきました。

その伝統と革新の両方を追求する姿勢こそが、現在もシャトー・ラ・コンセイヤントが世界最高峰のワインのひとつとして君臨し続けられている所以なのかもしれません。
私たちはシャトー・ラ・コンセイヤントのワインを飲むとき、その繊細かつ華美な味わいに感銘を受けると共に、5代にわたって受け継がれてきた揺らぐ事ない彼らの哲学と愛情を感じ取ることができるでしょう。

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