2024年3月21日(木)、シャトー・ディケム(以下、ディケム)の最新ヴィンテージである「Chateau d’Yquem 2021」がついにリリースとなりました。
本日よりTERRADA WINE MARKETにて、ルグラン フィーユ・エ・フィスより販売開始いたします。
リリースに先駆けた過日、ルグラン フィーユ・エ・フィス主催のもと、ディケムのマーケティング・ディレクターを務めるマチュー・ジュリアン氏、栽培・醸造責任者を務めるロレンツォ・パスクィーニ氏をお招きし、貴重なお話をお伺いできました。
今回のイベントが実現できたのは、ルグラン フィーユ・エ・フィス東京が、ディケムのライトハウスプログラムに選出されたことがきっかけです。
ライトハウスプログラムとは、ディケムが世界のレストランやワインバーとパートナーシップを組んで、ディケムをバイ・ザ・グラスで提供するプロモーション活動のこと。
高級ワインであるディケムがグラスで飲めてしまう、またとない機会なので、興味のある方はぜひ東京・広尾にあるルグラン フィーユ・エ・フィスに足を運んでみてはいかがでしょうか。
貴腐菌を生み出す世界でも希少なテロワール
ディケムを代表とする貴腐ワインをつくる貴腐ぶどうは、いくつもの自然条件が重なりあって初めて生み出されます。
貴腐ワインの特徴は、正式名称をBotrytis cinerea(ボトリティス・シネレア)という貴腐菌がぶどうの果皮を破り、ぶどうの水分が蒸発することで糖分が凝縮し、アルコール発酵後もしっかりとした甘味を残すワインになるという点です。
この貴腐菌が発生する条件が揃うことは世界的に見ても珍しく、「朝は靄(もや)がかかって湿度があり、午後は乾燥した状態になる」というように、湿度と乾燥が交互に繰り返すことによって貴腐菌が発生します。
貴腐菌は、多くの生産者にとってはぶどうを腐らせる(灰色カビ病の原因菌でもある)ので、これが発生することを抑えようとしますが、ディケムでは「ぶどうを次のステージに昇華させ、より味わいを複雑にしてくれる存在」として歓迎されます。
もう少し、ディケムのテロワールに焦点を当ててみましょう。
ディケムの畑はガスコーニュから続く丘に位置し、そこからスペインに向かって平地が続きますが、そこにあるランド・ド・ガスコーニュという森に湿気がたまりやすくなっています。
この湿気は、近くを通るガロンヌ川とシロン川からきており、さらにはディケムならではのミクロ・クリマとして地下水も湿度をつくる要因となっています。
しかしながら、湿気だけでは病害となってしまうため、湿気を飛ばして午後の太陽を浴びることが大切となってきます。
ディケムは「風をつくる工場」と言われるほど風に恵まれていて、湿った状態から乾いた状態に持っていくのに最適な条件が揃っていることも忘れてはなりません。
ディケムがディケムたる所以「技術の継承」
ディケムが他のシャトーと違う点は、大きく分けて3つあると、ロレンツォ氏は言います。
一つめは「複雑性のあるぶどうが育つこと」
二つめは「貴腐菌がしっかり育つ環境があること」。
そして三つめは「技術(ノウハウ)を次の世代に受け継いでいること」。
一つめの「複雑性」についていうと、ディケムには100haの敷地があり、4つの丘があります。
標高が1番低いところでは30m、1番高いところでは80mと起伏に富んでおり、畑が様々な方向に向いています。
土壌は時代的に3つに分類され、土地の種類的には4種類に分類されます。
このように、ディケムは様々なテロワールを持ち、様々なぶどうが生み出されることが、複雑性に繋がるのです。
二つめは先ほどの貴腐菌の話で、これも自然要因が大きく関係してきますが、三つめの技術の継承は人的要因が大きく、ディケムがディケムたる所以の要でもあります。
ディケムでは畑仕事を非常に重要視し、キャノピーマネジメント、湿度管理、選果……これらをすべて人の手で管理しています。
この人の手による管理には、経験が非常に重要となってきます。
ディケムには100人ほどの収穫人がいますが、平均年齢は60歳近く。
彼らは20回、30回と収穫を経験しているといいます。
ぶどうの木ごと、房ごと、そして同じ房でも実ごとによって貴腐菌の付き方が異なるため、収穫時の見極めは非常に難しく、この作業をディケムではヴァンダンジュ(収穫)と呼ばずにトリ(選別)と呼んでいるそうです。
醸造とは、ぶどうや貴腐菌が自分自身を表現する手助けである
厳しい選果を終えると、次に醸造が行われます。
醸造はできるだけ人の手を介さず、ぶどうや貴腐菌が自分自身を表現する手助けをすることだと、ディケムでは考えられています。
収穫されたぶどうは小さなタンクに入れられ、12時間ほど置かれたのち、樽に移されます
アルコール発酵には自然酵母が使われ、発酵の開始・終了は人為的な介入を行いません。
今は技術が進歩して、機械的な数値計測もできますが、ディケムではそういったものは一切使わずに、醸造家が見て、試飲して、感じる……このことを1番大切にしています。
アルコール発酵が終わると、エレバージュ(育成)の段階に入りますが、育成は100%新樽で24か月間行われます。
ここでも、育成についてVieillissement (ヴィエイスモン/熟成、古くなること)という言葉は使わずに、Elevage(エレバージュ/次のステップに昇華すること)という言葉を使っているのは、ディケムならではのこだわりを感じます。
エレバージュの期間に、少しずつワインは酸化し、ワインと貴腐菌が作用しあい、そして樽からタンニンが抽出されて、サルニテ(旨味)と苦味を与えることで複雑みを増していきます。
各要素が溶け込み合い、フレッシュ感を愉しめる2021年ヴィンテージ
さて、マチュー氏とロレンツォ氏から栽培・醸造に関するこだわりを伺いながら、いよいよ最新2021年ヴィンテージの試飲が始まりました。
今回、2021年ヴィンテージとの比較のために、2011年、2018年という希少なバックヴィンテージも試飲させていただきました。
まずは2021年ヴィンテージから。
グラスに注がれた瞬間から華やかな香りに圧倒され、ワインがすでに開けている状態であることが感じ取れます。
2021年ヴィンテージテイスティングノート
色 :明るい黄金色
香り :トロピカルフルーツ、柑橘などのフレッシュな香り
味わい :甘味、旨味、酸味、苦味の4つの要素が溶け合っている。酸味がしっかりしていることで甘さとのバランスがとれ、フレッシュ感がある。
対して、2011年、2018年ヴィンテージは、ワイン初心者のスタッフでもわかるほど、2021年ヴィンテージとの違いがはっきりと現れています。
2011年は「熟成の最初の窓が開いたワイン」。
ディケムは長熟で、いくつかの熟成のステージがあるとのことですが、1番最初の熟成の段階に入ったのがこの2011年です。
香りは、ドライアプリコット、ドライフィグ、マーマレード、レモンの皮。
味わいは甘味が穏やかになり、熟成による苦味が出てきています。
この苦味というのは非常に重要で、ワインに軽やかさを与えます。
一方、2018年はまだ十分にフレッシュ感が残っています
ただし、非常に暑かった年で、収穫も遅かったため、酸味はそこまで強く感じられません。
味わいはぶどうの成熟感をよく感じられ、非常に強い味わいとなっています。
ディケムが皆さまに最もお伝えしたいこと
試飲にて熟成の違いを感じ取ったあと、マチュー氏から「今日の中で最も皆さんにお伝えしたい」という大切な話を伺いました。
”ディケムは100年以上の熟成に耐えられますが、ディケムには1つの飲み頃というのはなく、どんどん世代ごとに変わっていきます。
若いディケムであっても十分に愉しめ、香りが華やかで、若いなりの魅力があるのです。
偉大なワインこそ、熟成のポテンシャルがあると言われ、実際それは間違っていません。
しかし熟成のポテンシャルがあるワインというのは、熟成させなければいけないワインというわけではないのです。”
マチュー氏の言う通り、2021年ヴィンテージは甘さだけではなく酸味がしっかりと保持されてフレッシュ感があり、今からでも十分愉しめる風味を呈していました。
今回、ルグラン フィーユ・エ・フィスより希少なバックヴィンテージも多数出品されています。
最新2021年ヴィンテージと、熟成感を感じられるバックヴィンテージをぜひ、比較してみてはいかがでしょうか。
また、今回イベントが開催された天王洲プレミアムのラウンジは、TERRADA WINE STORAGE天王洲プレミアムのご契約者様であればどなたでもご利用可能です。(*)
ディケムをTERRADA WINE STORAGEで保管・熟成させながら、その熟成の経過を定点観測するのに、ぜひご利用ください。
(*)ご利用には事前予約が必要です。詳しくはお問合せください。